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PLATE — KVASIR
NORÐR · 北欧神話
KVASIR

クヴァシル

クワシール · クファシル · Kvasir

アース神族とヴァン神族の和睦の唾から作られた賢者。答えられない問いはなかったという。ドヴェルグに殺され、その血に蜜を混ぜて醸されたものが詩の蜜酒である。

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解説

概要

クヴァシル(Kvasir)は、北欧神話の神。アース神族とヴァン神族の戦いの和睦にあたって両族が壺に吐いた唾から作られた存在で、答えられない問いはなかったとされる。世界を巡って知識を説いてまわったが、ドヴェルグの兄弟に殺され、その血は詩の蜜酒になった。

名は醸造と関わる。語幹 kvas- はゲルマン祖語の「押しつぶす、搾る」に遡るとされ、アルバート・モーリー・スターティヴァントは、搾って得られる液体——すなわちこの存在が作られた唾——を指す語だと見る。スラヴ語圏の発酵飲料クワス(kvas)と同根とする説もあり、アファナーシエフやデュメジルがこれを支持した。ルドルフ・シメクは、もとは果実を搾って発酵させた汁を指す語だったろうと述べる。古い時代には、実を口で嚙んで容器に吐き出してから発酵させる製法が行われていた。この神の作られ方は、その工程そのものである。

神話・物語

『詩語法』第57章。エーギルブラギに詩の技はどこから来たのかと問い、ブラギが答える形で語られる。アースとヴァンの両族は争いののち和睦し、その証として全員が一つの壺に唾を吐いた。神々はこの壺を和平の記念として残そうとし、無駄にすまいとして、そこから一人の人を作った。それがクヴァシルである。

クヴァシルは世界を広く旅し、人々に知識を教えた。やがてドヴェルグの兄弟フィヤラルとガラルが、内密に話がしたいと言って自分たちの住処へ招く。二人はクヴァシルを殺し、その血をソンとボズンという二つの壺、そしてオーズレリルという釜に受けた。血に蜜を混ぜて醸したものが詩の蜜酒であり、これを飲む者は詩人となり、賢者となる。兄弟はアース神たちに、クヴァシルは自分の知恵に息を詰まらせて死んだのだと説明した——問いを発せるだけの学のある者が誰もいなかったので、と。

賢すぎて死んだという嘘が、殺害の隠蔽として通ってしまう。この一言に、賢者という存在への皮肉が畳み込まれている。

ギュルヴィたぶらかし』第50章では、別の顔を見せる。バルドルの死の責を負って逃げるロキは、昼は鮭に姿を変えて滝に潜み、神々がどんな道具で自分を捕らえるかを考えて亜麻糸を編み、網を作った。神々が近づくのを見て網を火に投げ入れ、川へ飛び込む。神々の一行のうち最初に家へ入ったのがクヴァシルで、灰に残る網の形を見てそれが魚を捕る道具だと見抜き、皆に告げた。神々は灰の形を写して網を作り、ロキを捕らえて縛った。

つまりこの存在は、詩の起源であると同時に、ロキ捕縛の立役者でもある。

『ヘイムスクリングラ』の『ユングリング家のサガ』第4章は、これをまったく別の枠に置く。ここでのクヴァシルはヴァン神族の一員で、彼らのうち最も賢い者として、アースとの人質交換に差し出される。神々を過去の人間として語り直すエウヘメリズムの枠組みでの記述であり、唾から生まれたという由来は姿を消している。

図像と象徴

図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。

象徴として際立つのは、この存在が最初から最後まで液体だという点である。唾から作られ、血として搾られ、蜜酒になる。人の形をとっているのは中間の一時期だけで、前も後も容器のなかの液である。詩というものを、どこかから注がれ、飲まれ、移し替えられるものとして捉える発想が、この造形の背後にある。

スカルド詩は詩そのものを「クヴァシルの血」と呼んだ。10世紀アイスランドのエイナル・スカーラグラムの『ヴェレクラ』にその用例がある。詩を作ることが、殺された賢者の血を口にする行為として言い表されている。ケニングという技法が、いかに物語を一語に圧縮して運ぶかを示す例である。

関わる神格・伝承

生みの親は特定できない。アースとヴァンの両族全体の唾から作られており、父も母も持たない。この点で北欧神話に類例のない出自である。

殺したのはドヴェルグのフィヤラルとガラル。血から醸された蜜酒はその後、二人が殺した巨人ギリングの息子スットゥングの手に渡り、オーディンが蛇に姿を変えて岩山に忍び込み、三夜で飲み干して鷲となって持ち帰る。詩が神々のもとへ、そして人のもとへ届くまでの経路は、殺人と復讐と盗みで繋がれている。

文化的足跡

「クヴァシルの血」は、詩を指す語として中世アイスランドの詩に定着した。詩人が自らの営みを説明するとき、この殺害を引き合いに出したことになる。

近代以降、この名は醸造と知識の双方を連想させる語として用いられてきた。ノルウェーの検索サービスにこの名が採られたのは後者の連想による。前者の連想からは、北欧の醸造所や飲料の名にも現れる。答えられない問いはなかったという設定は、現代の翻案でも好んで採られている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q216763 — 骨格データの出典