ジャガッダートリー
ジャガッダートリ · ジャガダートリー · マハードゥルガー
「世界を担う者」を意味するドゥルガーの一相。獅子に坐し、我執を象徴する象を足下に敷く。ベンガルではドゥルガー・プージャの一か月後に祭が営まれる。
解説
概要
ジャガッダートリー(ベンガル語 জগদ্ধাত্রী、「世界を担う者」)は、ヒンドゥー教の女神ドゥルガーの一相である。西ベンガル州を中心に、オリッサ州、ジャールカンド州でも祀られる。
『シヴァ・プラーナ』ではマハードゥルガーの名で呼ばれ、他の文献ではウマー・ハイマヴァティーとも記される。
ベンガルでは、この女神のプージャは女神の「帰還」として祝われる。クリシュナナガル、チャンダンナガル、シャーンティプル、リシュラー、ミードナープル、シングール、グプティパーラーでとりわけ盛んである。
神話・物語
伝説は『ケーナ・ウパニシャッド』の一話に着想を得ている。『カーティヤーヤニー・タントラ』は次のように語る。
ドゥルガーが魔王マヒシャースラを討ったのち、天界の神々はその力を忘れてしまった。そこで彼らを試すため、パールヴァティーはアグニ、ヴァーユ、ヴァルナ、チャンドラの前に現れた。自らを無敵と考え、アハンカーラ(我執)に呑まれていた神々である。女神は彼らに、一本の小さな草の葉を動かしてみよと求めた。ヴァーユは吹き飛ばせず、アグニは燃やせない。どの神も課題に失敗した。
ついに神々は、この女神こそが宇宙のあらゆる力の——自分たちの力さえもの——源であることを悟る。女神は獅子に乗るウマーの姿で彼らの前に現れた。この物語において、女神はブラフマンと等置される。
女神は神々の我執に象の形を与えた。ジャガッダートリーが獅子に坐し、その下に象を敷く姿で表されるのは、これによる。象は我執を象徴し、その足の下に踏まれている。乗物である獅子は勇気と武勇、そしてシャダ・リプ(六つの敵——欲、怒り、貪り、迷い、慢心、嫉妬)を含むあらゆる困難を克服する力を表す。
象の魔族カリンドラースラを討ったとも伝えられる。この事績はディヤーナ・マントラには見えないが、神像において獅子の下に敷かれる象がカリンドラースラにほかならないとされる。インドラの神象アイラーヴァタが呪いを受けてカリンドラースラとして生まれた、とも語られる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、西ベンガル州クリシュナナガルのジャガッダートリー像「ブリマー」である。この地でとりわけ名高い像で、ジャガッダートリー・プージャの中心をなす。
ディヤーナ・マントラが記す姿はこうである。獅子の上に坐し、さまざまな装身具をまとい、四臂に弓、矢、チャクラ、法螺貝を持つ。昇る太陽のように赤みを帯び、蛇の花輪を掛ける。
赤い色と武器はラジャ・グナ(激質)の徴である。ただしこれは破壊や戦のためではなく、世界をリタム(宇宙の秩序)とサティヤム(真理)に向けて保つためのものだと説かれる。19世紀の聖者ラーマクリシュナは「ジャガッダートリーの姿の意味を知っているか。彼女は世界を担っている。もし手を止めれば、世界は滅びる」と語ったと伝えられる。
蛇はヨーガの象徴、聖紐(ウパヴィータ)はバラモンの象徴である。この女神はヨーギニーであり、大いなるヨーガの力によって世界を保つ。世界を支えるという働きが、戦ではなくヨーガとして語られている点が、ドゥルガーの他の相との違いである。
関わる神格・伝承
ドゥルガーの一相であり、カーリー、チャンディー、マハーカーリーと連続する。象を踏むという図像は、この女神に固有のものである。
ドゥルガー・プージャの一か月後、カールティカ月の白半九日にジャガッダートリー・プージャが営まれる。ドゥルガー・プージャが終わって女神が去ったのち、ふたたび帰ってくるという理解が、ベンガルにおけるこの祭の位置づけである。
文化的足跡
チャンダンナガルのジャガッダートリー・プージャは、旧フランス領の町に伝わる大規模な祭として知られ、電飾の装飾で名高い。クリシュナナガルの祭とともに、ベンガルの年中行事の一つに数えられる。
日本語圏では、ベンガルの祭といえばドゥルガー・プージャの名が知られる一方、その一か月後に営まれるこの祭はまったく紹介されていない。同じ女神が去り、また戻ってくるという時間の構成は、ベンガルの宗教暦を理解する手がかりになる。