マハーカーリー
マハーカーリ · マハーカーリカー · アーディ・シャクティ
時と死を司るシャークタ派の女神。カーリーの一相であり、タントラとプラーナでは至高の存在としても説かれる。配偶神はシヴァの一相マハーカーラ。
解説
概要
マハーカーリー(サンスクリット महाकाली)は、ヒンドゥー教と仏教に共通する神格である。ヒンドゥー教では、女神を中心とするシャークタ派において時と死を司る女神とされる。
カーリーの一相であり、諸種のタントラとプラーナにおいては至高の存在としても説かれる。宇宙的な力、時、生、死、そして再生と解脱に結びつく激しい女神である。
配偶神はマハーカーラ——意識の神であり、実在と存在の基底とされるシヴァの一相である。マハーカーリーという名は、サンスクリットにおいてマハーカーラすなわち「大いなる時」(死とも解される)の女性形にあたる。
神話・物語
起源は複数のプラーナとタントラの聖典に見える。
シャークタ派の文献では、この女神は宇宙の原初の力アーディ・シャクティとして、究極の実在ブラフマンと同一のものとして描かれる。あるいはサーンキヤ哲学の三グナ(三つの属性)を表すマハーデーヴィーの三顕現の一つとされ、その場合マハーカーリーはタマス、すなわち惰性の力を表す。
『デーヴィー・マーハートミヤ』——『マールカンデーヤ・プラーナ』に後から挿入された、シャークタ派の中核をなす文献——は、三つの挿話それぞれに異なる女神の相を割り当てる。マハーサラスヴァティー、マハーラクシュミー、そしてマハーカーリーである。マハーカーリーは第一の挿話に配される。ヴィシュヌの眠りを司り、魔族マドゥとカイタバを退ける場面である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ニューデリー国立博物館が所蔵するマハーカーリー像である。
インドの民間美術において、この女神は青ないし黒の肌で描かれるのが通例である。最も一般的な四臂の図像では、それぞれの手に三日月形の刀、剣、三叉戟(トリシューラ)、魔族の断ち切られた首、そしてその血を受ける鉢または髑髏杯(カパーラ)を持つ。両眼は陶酔と激怒に赤く、髪は乱れ、小さな牙が口から覗くこともあり、舌を垂らしている。
首飾りは、討ち取った魔族の首を連ねたものである。数は百八とも五十とも数えられる。百八はヒンドゥー教における吉数であり、数珠(ジャパ・マーラー)の玉の数にあたる。五十はサンスクリットの字母デーヴァナーガリーの文字数を表す。腰には断たれた腕を連ねた裳を巻く。
十の頭を持つ姿(ダシャムキー)は「十マハーヴィディヤーのマハーカーリー」と呼ばれ、十智女神を体現するとされる。燃える墓、あるいは腐りゆく屍の上に坐す姿で表されることもある。肌の色は、星のない夜空にたとえられる。十の頭、三十の燃える眼、十の腕、十の脚を備え、それぞれの手が持つ器物は諸神の力を表す。マハーカーリーがそれらの神々の力を包摂しているという含意であり、この女神をブラフマンと同一とみる解釈に沿う。
関わる神格・伝承
カーリーの一相であり、ドゥルガー、チャンディー、チャームンダーと連続する。配偶神はマハーカーラ。
仏教にも同名の神格があり、チベット仏教のマハーカーラ(大黒天)と対をなす女尊として説かれる。ヒンドゥー教と仏教の女神論が接する地点にあたるが、両者の神学的な位置づけは同じではない。
文化的足跡
マハーカーリーは、今日のシャークタ派の実践において中心的な位置を占め続けている。西ベンガル、アッサム、ネパールを中心に、その祭祀は広く行われている。
日本語圏では、カーリーの名は「破壊の女神」として広く知られる一方、マハーカーリーという名と、それが至高神として説かれる神学的な文脈まで紹介されることは少ない。恐ろしい姿の女神が同時に究極の実在とされるという構造は、ヒンドゥー教の女神論を理解するうえで避けて通れない。