イヒ
イヒ · イヒィ · Ihy
ハトホルの子でシストルムを持つ若い神。名は楽器の演奏の喜びを表す。裸の子供が指を口に当てる姿で描かれる。デンデラでホルス・ハトホル・イヒの三柱一体をなす。ギリシア人はハルポクラテースと同一視した。
解説
概要
イヒ(Ihy)は、エジプトの若い神で、通常シストルム(がらがら)を持って描かれる。これは、この楽器と結びつけられた母ハトホルへの言及である。イヒの象徴はシストルムと首飾りである。
イヒの名は、ハトホルによる手楽器の演奏の喜び、あるいは「仔牛」を表す。エジプト人自身はこの名を鳴子と結びつけた。
系譜
イシス、セクメト、ネイトを含む他の女神も、異なる伝説においてときに母とされる。戦の神ホルスがイヒの父であるが、ときに太陽神ラーも父とみなされる。
デンデラのハトホル神殿において、ハトホル、エドフのホルス、そしてイヒが三柱一組(三神一体)をなす。エジプトの主要な神殿において、この父・母・子の三柱構成は定型である。
図像と象徴
固有の図像は存在するが、本サイトは主画像を掲げない。
イヒは裸の子供として描かれ、巻毛を持ち、若さの徴である横髪の巻き毛(サイドロック)をつけ、指を口に当てる。この「指を口に当てる子供」の図像が、エジプトにおける幼児の表現の定型である。
シストルムという楽器が、この神を規定する。金属の輪が枠のなかで鳴るこの楽器は、ハトホルの祭祀に不可欠であり、その音が神を喜ばせるとされた。音楽の喜びそのものが、子として人格化されている。
神殿の三柱一体
エジプトの神殿では、主神と配偶神と子神の三柱が祀られるのが通例である。テーベではアメン・ムト・コンス、メンフィスではプタハ・セクメト・ネフェルトゥム、デンデラではホルス・ハトホル・イヒである。
子神は多くの場合、独立した神話を持たず、両親の関係の帰結として存在する。
関わる神格・伝承
母はハトホル、父はホルス。デンデラの三柱一体。
ギリシア人はイヒをハルポクラテース——指を口に当てる幼児の神——と同一視した。
文化的足跡
デンデラのハトホル神殿には、イヒの誕生を表す「マンミシ」(誕生殿)が付属し、その壁面に神の誕生の場面が刻まれる。