ギルヴァイスウィ
ギルヴァエスウィ · ギルファエスウイ · Gilvaethwy
中世ウェールズ『マビノギ四枝』第四枝の人物。叔父の足持ちに執心して戦を招き、罰として三年のあいだ獣に変えられた。
解説
概要
ギルヴァイスウィ(Gilfaethwy)は、中世ウェールズのマビノギオン所収『マビノギ四枝』第四枝に登場する人物である。ドーンの子で、グウィディオンの弟、アリアンロッドの兄弟にあたり、グウィネズの王マースの甥である。
第四枝の出来事のすべては、この人物の欲望から始まる。それでいて物語のなかで彼が語る言葉はごくわずかで、事を運ぶのはもっぱら兄のほうである。
神話・物語
マースは、戦時でないかぎり処女の膝に足を預けていなければ死ぬ身であった。ギルヴァイスウィは、その足持ちである処女ゴイウィンに執心して痩せ細るほどになる。兄グウィディオンは、王を宮廷から引き離すよりほかに手はないと見て、南北に戦を仕組んだ。ダヴェドの王プリデリから異界の豚を騙し取り、報復の侵攻を招いたのである。
マースが出陣したその夜、二人は宮廷へ引き返した。ギルヴァイスウィは王の寝所でゴイウィンを犯し、兄はその場に居合わせている。
戦から帰った王は、足を膝に預けようとしてできないことで事を知った。ゴイウィンを妃に迎えて名誉を回復させたのち、甥たちには罰を科す。一年目、ギルヴァイスウィは牝鹿に、グウィディオンは牡鹿に変えられ、つがいとなって子を産んだ。二年目は猪と牝猪、三年目は狼と牝狼。毎年生まれた子は人の姿に戻されて王のもとへ引き取られ、ヒッズン、ヒフッズン、ブレイズンと名づけられた。三年ののち人に戻された二人は湯を使い、髪を梳かれ、宮廷に迎え入れられる。以後ギルヴァイスウィが物語に姿を見せることはない。
図像と象徴
図像は伝わらず、当サイトも主画像を掲げない。
彼に結びつく標識は、罰として与えられた三種の獣である。この罰の眼目は、二人が交互に雌雄を入れ替えて交わり、子を産まされる点にある。姦淫の罪に対して獣の交わりを課し、しかも辱めを受ける側を年ごとに交代させる。マースの魔術が、罪の性質にそのまま形を与える裁きであることは、第四枝のこの場面に最もよく表れている。
系譜と関係
母はドーン、兄はグウィディオン、兄弟にアマイソンとゴヴァノン、姉妹にアリアンロッド。叔父はマース。三年の罰のあいだに生まれた三人の子は、王家に引き取られた。
第四枝が彼にほとんど台詞を与えないことから、この人物はより輝かしい兄の物語を動かすために置かれた脇役にすぎないとみる読みが一般的である。ただし物語の因果をたどれば、プリデリの死も、アリアンロッドの辱めも、スェウ・スァウ・ゲフェスの誕生も、すべてこの弟の欲望に発している。
文化的足跡
マビノギオンの多くの人物と同じく、この名もアーサー王物語に流れ込んだ。クレティアン・ド・トロワ『エレックとエニード』に現れる騎士ジフレ(Girflet fils Do、「ドの子ジフレ」)がそれにあたるとされ、オック語で書かれた唯一の現存ロマンス『ジャウフレ』の主人公にもつながる。ロジャー・シャーマン・ロウミスは、その過程で母ドーンが男性のドに転じたことを指摘した。