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デーイアネイラ
PLATE — ΔΗΪΆΝΕΙΡΑ
HELLAS · ギリシア神話
ΔΗΪΆΝΕΙΡΑ

デーイアネイラ

デイアネイラ · デーイアネイラー · デイアニラ

Marie-Lan Nguyen PUBLIC DOMAIN

ヘーラクレースの後妻。夫の愛をつなぐつもりでネッソスの血を塗った衣を送り、結果として夫を死に至らしめて自らも命を絶った。

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解説

概要

デーイアネイラ(Δηϊάνειρα / Deianira)は、カリュドーンの王オイネウスの娘で、ヘーラクレースの後妻である。名は「人を滅ぼす女」と解される。夫の心をつなぎとめようとした行いが、そのまま夫を殺すことになった。

ギリシア悲劇の女性像のなかでも特異な位置を占める。メーデイアのように意図して害するのではなく、善意の贈り物が破滅をもたらす。ソポクレース『トラーキースの女たち』は、この取り返しのつかなさを主題として彼女を描いた。

神話・物語

求婚者は二人いた。ヘーラクレースと、河神アケローオスである。河神は牡牛や蛇に姿を変えて戦い、角の一本を折られて退いた。この角がのちに豊穣の角(コルヌコピア)になったとも伝えられる。デーイアネイラは英雄の妻となった。

道中、エウエーノス川で渡し守のケンタウロス、ネッソスが彼女を背に乗せて運ぶ。川の中ほどで乱暴を働こうとしたところを、対岸のヘーラクレースがヒュドラーの毒を塗った矢で射抜いた。死に際、ネッソスは彼女に告げる。自分の血には愛を取り戻す力がある、夫の心変わりのときに使え、と。彼女はその血を密かに蓄えた。

歳月ののち、ヘーラクレースはオイカリアを攻め、王女イオレーを戦利品として連れ帰る。夫を奪われることを恐れたデーイアネイラは、ネッソスの血を塗った衣を送った。血にはヒュドラーの毒が沁みており、着た者の肉を焼く。零れた血が日の光を浴びて泡立つのを見て、彼女は自分が何をしたかを悟る。使者を走らせたが間に合わなかった。

夫の苦しみを知ったデーイアネイラは、剣で自ら命を絶つ。ソポクレースの劇では、彼女は最後まで一言も弁明せず、無言で舞台を去ってから死ぬ。

図像と象徴

古代美術で彼女が主役になることは少ない。ほとんどの作例は、ネッソスに攫われる場面か、川を渡される場面である。前6世紀の黒絵から前5世紀の赤絵まで、構図は一貫して「運ばれる女」であり、彼女自身に動作は与えられない。

ローマ期の壁画は、より穏やかな瞬間を選ぶ。ポンペイ出土の壁画(ナポリ国立考古学博物館)は、幼い息子ヒュロスを抱いたヘーラクレースが、これから妻を背に乗せようとするネッソスを見やる場面を描く。危機の直前に置かれた家族の情景であり、結末を知る者にだけ意味が反転する。

近世以降は逆に、彼女は劇的な主題として好まれた。ネッソスに奪われる場面はルーベンスやグイド・レーニが繰り返し描き、ジャンボローニャの群像彫刻はこの構図を立体で定型化した。悲劇の主人公としてのデーイアネイラより、略奪される女としてのデーイアネイラが受け継がれたことになる。

系譜と関係

父はカリュドーン王オイネウス、母はアルタイアー。ただし実の父はディオニューソスであるとも伝えられる。兄はカリュドーンの猪狩りで名高いメレアグロス。ヘーラクレースとの間にヒュロスら数人の子をもうけた。

彼女の悲劇は、夫が用いた武器が巡り巡って夫を殺すという構造をもつ。ヒュドラーの毒はレルネーの功業で得られ、ネッソスの体を通り、衣に移って主のもとへ帰った。ヘーラクレースの生涯の功業が、そのまま死因に転化する。

文化的足跡

「ネッソスの衣」は、逃れられない災いや、身を滅ぼす贈り物を指す成句として西洋の言語に残った。日本語でも「ネッソスの衣」の訳語で用いられる。

ソポクレース『トラーキースの女たち』のほか、セネカ『オイタ山上のヘーラクレース』、ヘンデルのオラトリオ《ヘラクレス》(1745年)、そしてエズラ・パウンドやT・S・エリオットの詩がこの物語に触れている。オウィディウス『変身物語』第9巻と『名婦の書簡』第9歌も、彼女の視点から夫への言葉を綴っている。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

ΔΗΪΆΝΕΙΡΑ
デーイアネイラ
ギリシア神話
ἩΡΑΚΛΗ͂Σ
ヘーラクレース
配偶者
収載データなし
ΔΗΪΆΝΕΙΡΑ
デーイアネイラ
ギリシア神話
収載データなし
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資料

Wikidata
Q272000 — 骨格データの出典
Commons
Deianira — 図像カテゴリ