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ダゴン
PLATE — 𒀭𒁕𒃶
PHOENICIAN · フェニキア・カナン神話
𒀭𒁕𒃶

ダゴン

ダガン · ダグヌ · ダガヌ

Zunkir CC BY-SA 4.0

ユーフラテス中流域からカナンにかけて崇拝された穀物の神。エブラやマリでは神々の主とされた。旧約聖書ではペリシテ人の神として語られる。

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解説

概要

ダゴン(𒀭𒁕𒃶 Dagan。ダガンとも)は、ユーフラテス中流域からシリア、カナンにかけて広く崇拝された神である。名はウガリット語 dgn、ヘブライ語の古語ダーガーンと同じく「穀物」を意味する。ビュブロスのフィロンが伝えるサンクニアトンの記述も、この神の名を穀物の語で説明し、「穀物と鋤とを見出したがゆえにゼウス・アロトリオス(鋤のゼウス)と呼ばれた」と述べる。

エブラでは前2300年ごろ、二百を数える都市の神々の頂点に置かれ、「神々の主」「地の主」「カナンの主」といった称号を帯びていた。マリとテルカにも大きな神殿があり、テルカのそれはこの神の主要な聖所であった。ユーフラテス中流域における位置は、南メソポタミアにおけるエンリルのそれに相当し、両者はしばしば対応づけられる。

神話・物語

ダガンを主人公とする神話は伝わっていない。この神について知られるのは、王の銘文と行政文書、そして夢の報告からである。

アッカドのナラム・シンは「杉の山」への遠征を、ダガンが自らの王国を強大にしたと記した。ハンムラビは法典の序文で、自らを「わが創造者ダガンの佑けによりユーフラテス川の村々を支配する者」と呼ぶ。前18世紀のマリの官吏イトゥル・アスドゥが王ジムリ・リムに送った書簡は、ある男の夢にダガンが現れ、王がテルカの自分に報告を怠ったために勝利を得られないのだと述べたことを伝える。神の意志が夢を通じて政治に介入する、古代西アジアらしい記録である。

ウガリットでは、ダガンは至高神エールと嵐神バアルに次ぐ第三の位置を占め、大神殿を持っていた。ところが『バアル叙事詩』にはほとんど登場せず、バアルの父として言及されるにとどまる。神殿の規模と神話での存在感がこれほど食い違う例は珍しく、J・フォンテンローズは、ウガリットにおいてダガンがエールと同一視されていたためだと論じた。エールの神殿址が見つかっていないこととも符合する説明である。

図像と象徴

ダガンの確実な図像は知られていない。本項に掲げるのは、ウガリットの「ダガン神殿」から出土した前13世紀の砂岩製奉献碑で、ウガリット語アルファベット楔形文字で、王家の死者への供犠に関連してダガンに捧げられた旨が刻まれている。姿ではなく文字がこの神を指し示す遺物である。

近世以来この神に付きまとってきたのが「魚神」の像である。これはヘブライ語の dāg(魚)と結びつけた語源解釈にもとづく。11世紀のラシに始まり、13世紀のダヴィド・キムヒはサムエル記の記述を「魚の形だけが残された」と解して、臍から下が魚である姿を描いてみせた。ヒエロニュムスもこの連想を受け継いでいる。1928年にH・シュメッケルがこれを退けて以来、本来のダガンは穀物の神であって魚神ではないというのが定説である。ミルトン『失楽園』の海の怪物、そして20世紀の怪奇小説を経て一般に定着した半魚人の像は、この誤った語源の系譜に属する。

系譜と関係

妻はシャラシュとされる史料が多く、イシャラとするものもある。シャラシュはニンリルに対応づけられ、フルリではクマルビの妻とされた。夫たちが「神々の父」として重ねられたことに伴う対応である。

バアル=ハダドは通例この神の子とされる。ただしサンクニアトンの伝えるフェニキアの伝承では、ハダドは天が愛人に孕ませた子であり、その愛人がダゴンに与えられたとされるから、ダゴンは異母兄にして養父ということになる。伝承は一本に定まらない。

シリアの文書では、表語文字 dNISABA がダガンを表記することがある。ウガリットで彼の名が穀物の語と同音であったため、書記たちが穀物の女神ニサバの名を借りた言葉遊びと解されている。

文化的足跡

イッディン・ダガン、イシュメ・ダガンといった王名が、イシン王朝やアッシリアに知られる。旧約聖書ではもっぱらペリシテ人の神として現れ、ガザとアシュドドの神殿、士師サムソンの最期、契約の箱の前に倒れ伏す神像の挿話がこの神をめぐって語られる。前5世紀のシドン王エシュムンアザルの石棺銘文は、シャロン平野の「ダゴンの強大な土地」に言及する。

ローマ期のガザでは、マルナス(「われらの主」)と呼ばれる大神が信仰された。ヘレニズムの装いをまとったダゴンとみられ、クレタのゼウスと同一視されている。その神殿マルネイオンは402年に焼き払われた。近代の怪奇小説がこの名を借りて独自の海の神を造形したが、それは古代の穀物神とは系統を異にする創作である。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
クマルビ メソポタミア神話 同一視
前18世紀にはすでに、青銅器時代の内陸シリアの主神ダガンとの結びつきが生じている。両者はともに女神シャラシュと結ばれた。

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

𒀭𒁕𒃶
ダゴン
フェニキア・カナン神話
𐎁𐎓𐎍
バアル
収載データなし
𒀭𒁕𒃶
ダゴン
フェニキア・カナン神話
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資料

Wikidata
Q623065 — 骨格データの出典
Commons
Dagon — 図像カテゴリ