スカマンドロス
スカマンドロス · クサントス · Scamander
トロイアの平野を流れる河神で、神々はクサントスと呼んだ。『イーリアス』第21歌で、死体を投げ込むアキレウスに抗議し、水を逆巻かせて溺れさせようとしたが、ヘーパイストスの火に焼かれて屈した。トロイア王家の祖。
解説
概要
スカマンドロス(Σκάμανδρος / Skamandros)は、トロイアの平野を流れる川の神である。『イーリアス』によれば、神々はこの川をクサントス(黄褐色の川)と呼び、人間はスカマンドロスと呼んだ。第21巻でアキレウスと戦う河神として知られる。
神話・物語
ヘーシオドス『神統記』は、スカマンドロスをオーケアノスとテーテュースの子である河神の一柱に数える(345行)。
『イーリアス』第21巻で、パトロクロスの死に怒るアキレウスは、トロイア勢を川へ追い込んで次々に斬り、死体で流れをせき止めた。河神は人の姿で現れ、殺戮をやめるよう求めたが、アキレウスは聞き入れない。河神は水を盛り上がらせて英雄を呑み込もうとし、兄弟の川シモエイスにも加勢を求めた。アキレウスが逃げきれずに溺れかけたとき、ヘーラーの命を受けたヘーパイストスが炎を放ち、川岸の木々と水を焼いた。煮え立つ水に苦しんだ河神は、もうトロイア方を助けないと誓って引き下がった。神々が互いに戦う一連の場面(テオマキアー)のなかで、火と水が対決する一幕である。
トロイア方では、スカマンドロスの神官ドロピオーンが「民に神のように敬われた」と語られ(5巻)、川が土地の神として祀られていたことがうかがえる。ヘクトールは息子を「スカマンドリオス」と名づけていた。
図像と象徴
本サイトの主画像は、ルーヴル美術館の天井装飾《アキレウス、クサントス、シモエイス》(ルイ=シャルル=オーギュスト・クデール作)で、『イーリアス』第21巻の川との戦いを描く。
古代の図像では、河神は角のある男や、水瓶にもたれて横たわる髭の男として表されるのが通例で、スカマンドロスもこの型で考えられていたとみられる。
系譜と関係
父はオーケアノス、母はテーテュース。ニュンペーのイーダイアーとのあいだに、トローアスの最初の王テウクロスをもうけた。娘ストリューモーはラーオメドーンの妻となり、ティートーノスとプリアモスの母となった。トロイア王家は、父祖をこの川にさかのぼることになる。
文化的足跡
この川は現在のトルコのカラメンデレス川にあたると考えられている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。