スカマンドロス
スカマンドロス · クサントス · Scamander
トロイアの平野を流れる河神で、神々はクサントスと呼んだ。『イーリアス』第21歌で、死体を投げ込むアキレウスに抗議し、水を逆巻かせて溺れさせようとしたが、ヘーパイストスの火に焼かれて屈した。トロイア王家の祖。
解説
概要
スカマンドロス(Scamander、クサントス Ξάνθος とも)は、ギリシア神話における河神である。トロイアの平野を流れる川を体現する。
神々はこの川をクサントス(「黄褐色の」)と呼び、人はスカマンドロスと呼んだと『イーリアス』は記す。神の言葉と人の言葉が異なるという観念の例である。
神話・物語
アキレウスとの戦い。 『イーリアス』第21歌において、アキレウスはパトロクロスの復讐のためトロイア軍を追い、その多くを川に追い込んで殺した。死体で川が塞がれたとき、スカマンドロスは人の姿で現れ、「わが流れが死体で満ちる。もうやめよ」と告げた。
アキレウスが従わなかったため、河神は水を逆巻かせてアキレウスを溺れさせようとした。英雄は初めて恐怖を覚え、逃げた。
ヘーラーの求めに応じ、ヘーパイストスが火をもって川を焼いた。水が沸騰し、スカマンドロスは屈服して戦いをやめた。
神々の戦い(テオマキアー)の一場面であり、火と水の対決として語られる。
パリスの審判。 スカマンドロスの子ストリューモーはラーオメドーンの妻であり、その子がプリアモスとティートーノスである。トロイア王家は、この河神の血を引く。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ルーヴル美術館の装飾《アキレウス、クサントス、シモエイス》である(クデール作)。
英雄と戦う川という主題が、この神格を規定する。ギリシア神話において、河神が英雄と直接戦う例は稀である。土地そのものが、侵入者に抵抗する。
トロイアの川がギリシアの英雄と戦うという構図は、戦争が土地と人の全体に及ぶことを示す。
関わる神格・伝承
トロイア王家の祖。兄弟はシモエイス(同じくトロイアの川)。子はストリューモー、テウクロス。
文化的足跡
スカマンドロス川(現在のカラメンデレス川)は、トロイア遺跡の傍らを今日も流れる。シュリーマンによるトロイア発掘において、『イーリアス』の地形描写との照合が行われた。