デルバイス
デルバイド · デルベース · ドルブ=アイド
アイルランド神話の人物。ダグザのあとを継いでトゥアハ・デ・ダナーンとフォモール族を十年統べ、息子フィアハに殺された。同名者が系譜に複数おり、しばしば混同される。
解説
概要
デルバイス(Delbáeth、デルバイド Delbáed とも)は、アイルランド神話の人物である。同じ名が系譜のなかで繰り返し現れるため、複数の人物がしばしば混同されてきた。
『地名譚』によれば、名はドルブ=アイド(Dolb-Aed)に由来し、「魔法の火」あるいは「火の形をした」を意味する。
神話・物語
系譜が、この人物について伝わることのほぼすべてである。
父は資料によって異なり、トゥアハ・デ・ダナーンのオェングスあるいはオグマ、またはフォモール族のエラハとされる。母はフォモールのエスニウである。
祖父にあたるエオヒド・オッラサル——すなわちダグザ——のあとを継いで、アイルランドの上王となった。統一されたトゥアハ・デ・ダナーンとフォモール族を十年にわたって治め、息子フィアハの手にかかって死んだ。
子については複数の伝えがある。女神エフネを娘とする伝承がある。『アイルランド来寇の書』の一部は、デルバイスをブリアン、ユハル、ユハルバの父とし、あわせて彼が「トゥイリル・ビクレオ」とも呼ばれたと記す。この呼称ゆえに、デルバイスは雷神トゥレンと同一人物とみなされる。トゥレンもまた同じ三子の父とされているためである。
古代アイルランドの部族デルヴナは、この人物の子孫を称した。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この人物が担うのは、系譜における接続点という機能である。フォモールとトゥアハ・デ・ダナーンの双方に父を持ち、両族を統一して統治し、息子に殺される。二つの種族を一つの家系に繋ぐ位置に置かれている。
名の「魔法の火」という語義も、別の伝えと結びつく。「タルの子ルガイド」が魔法の火を灯し、そこから五つの流れが噴き出したのち、彼はデルバイスと呼ばれるようになったという。名が事績から与えられる型である。
系譜と関係
父はオェングス、オグマ、あるいはエラハ。母はエスニウ。祖父はダグザ。子はフィアハ、そして伝えによってブリアン、ユハル、ユハルバ、およびエフネ。
同名の別人として、デルバイス・マク・ネイトがいる。『アイルランド来寇の書』の同じ箇所で、トゥイリル・ビクレオの曽祖父として言及される人物である。
系譜文献における同名の反復は、アイルランド神話を読むうえでの主要な障害の一つである。この人物の場合、少なくとも三通りの父と、二人以上の同名者が並存している。系譜が事実の記録ではなく、諸集団の関係を表現する枠組みとして機能していたことを示す例といえる。
文化的足跡
日本語圏でこの人物が単独で紹介されることはない。他の神格の系譜を説明する際に、父あるいは子として名が出るのみである。
それでもこの名が消えなかったのは、系譜そのものが伝承の骨格だったからである。誰の子であるかが、その人物が何者であるかを決める。デルバイスのように事績をほとんど持たない人物が写本に残り続けたのは、系譜を繋ぐために必要だったためにほかならない。