アウシュリネー
アウシュリネー · アウシュリネ · Aušrinė
リトアニアの明けの明星の女神。印欧祖語の暁の女神ハウソースに遡り、ウシャス、エーオース、アウローラと同語源である。太陽サウレの娘あるいは侍女で、朝に火を焚いて道を整える。夕の星ヴァカリネーと対をなす。
解説
概要
アウシュリネーは、リトアニアの神話における明けの明星(金星)の女神である。名は「明けゆく」を意味し、暁そのものを指す「アウシュラ」とは区別される。宵の明星ヴァカリネーと対をなし、太陽の女神サウレの娘、あるいは侍女とされる。その信仰は、インド・ヨーロッパ語族に共通する暁の女神にさかのぼると考えられ、ヴェーダのウシャスやギリシアのエーオース、ローマのアウローラと同じ源を持つ。
なお本サイトの分類では、バルト神話の体系に含めて扱う。
印欧語族の暁の女神
比較言語学によって、インド・ヨーロッパ語族の人々が共通して祀っていた暁の女神の名が再構成されている。ヴェーダのウシャス、ギリシアのエーオース、ローマのアウローラ、ゲルマンのエーオストレ、そしてリトアニアのアウシュリネーは、いずれも「輝く」を意味する同じ古い語根にさかのぼる。インド・ヨーロッパ語族の神々のなかでも、名と性格の対応が最もはっきりした例である。古い形をよく残すバルト諸語は、この再構成の重要な手がかりとなっている。ラトビアのアウセクリスとも関係がある。
太陽の娘
アウシュリネーは、太陽の女神サウレの娘、あるいは侍女とされる。朝にはサウレのために火をおこして道を整え、夕べには宵の明星ヴァカリネーが、サウレの寝床を整える。金星は明け方にも宵にも現れるが、この一つの星が、二人の姉妹として表されているのである。ウガリットのシャハルとシャリムや、ギリシアの明けの明星ポースポロスと宵の明星ヘスペロスも、同じ構造を持っている。
月の心変わり
リトアニアの民謡で広く知られる伝えでは、月の神メーヌオが妻のサウレを捨て、アウシュリネーに心を移した。怒った雷神ペルクナスが、月を剣で斬りつけたという。アウシュリネーが美と愛を司る存在であることが、この物語の前提になっている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
サウレの娘あるいは侍女で、ヴァカリネーと対をなし、アウセクリス、ウシャス、エーオースと同じ源を持つ。
文化的足跡
「アウシュラ」(暁)の名は、19世紀のリトアニアの民族復興運動の新聞の名に用いられた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。