サウレ
サウレ · サウレー · Saulė
リトアニアとラトビアに共通するバルトの太陽の女神。名は太陽を指す普通の語で、ラテン語 sōl などと同源。銅の車や黄金の舟で天を渡る。リトアニアの民謡では、夫の月がアウシュリネーに心を移し、雷神ペルクナスに斬られて欠けるようになったという。
解説
概要
サウレは、バルト神話の太陽の女神で、リトアニアとラトビアに共通する。名は両言語で太陽を指す普通の語そのものである(リトアニア語 Saulė、ラトビア語 Saule)。
女性の太陽
名は印欧祖語の太陽を指す語 *sóh₂wl̥ に遡り、ラテン語 sōl、ギリシア語 hēlios、サンスクリット sūrya と同源である。ギリシアのヘーリオスやヴェーダのスーリヤは男神だが、バルト諸語では太陽は女性名詞で、太陽の神も女神である。ゲルマン諸語でも太陽は女性であり、北欧では女神ソールがこれにあたる。
天を渡る車
サウレは銅の車に乗り、あるいは黄金の舟に乗って、疲れを知らない馬とともに天を渡る。夕べに西へ沈むと、夜のあいだ舟で海を渡って東へ戻る。海の彼方には黄金の館があるとも歌われる。
月との婚姻と破局
サウレは月の神メーヌオ(ラトビア語ではメーネス)の妻とされる。リトアニアの民謡(レーザの民謡集など)では、月は婚礼ののちまもなく明けの明星アウシュリネーに心を移し、怒った雷神ペルクナスが剣で月を斬りつけた。月が欠けるようになったのはそのためだという。
ラトビアの民謡では筋が異なり、メーネスが奪うのは明けの明星アウセクリスの花嫁であるサウレの娘(サウレス・メイタ)で、これを雷神ペールコンスが斬る。
民謡から組み立てられた神話
サウレについて知られていることの大半は、19世紀以降に採集された民謡(ダイナ)に拠っている。リトアニアとラトビアではそれぞれ数十万篇が記録されたが、一篇一篇は数行の短い詩で、まとまった神話を語るものではない。今日「バルト神話」として紹介される筋書きの多くは、こうした断片をつなぎ合わせて構成されたものである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、イグナリナ地区パルーシェに伝わった20世紀初めの木彫の太陽で、リトアニア国立博物館に収められている。人の顔をした円盤から波打つ光線が放射し、下に柄がついている。
系譜と関係
夫は月の神メーヌオ(メーネス)。ラトビアの民謡では娘サウレス・メイタがいる。大地の女神ジェミナを、サウレとメーヌオの娘とする伝えもある。
文化的足跡
「サウレ」は、今日もリトアニアとラトビアで女性の名として用いられている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。