アルシュタート
アルシュタート · アシュタード · リシュティ
ゾロアスター教のヤザタで、廉直と正義を司る女神。ラシュヌと不可分の対をなし、審判の橋で死者の行いを検分する者とされる。
解説
概要
アルシュタート(アヴェスター語 aršta̅t)は、「正しさ」「廉直」を意味する語であり、それを司るヤザタである。女性の抽象名詞で、神格も女性とされる。定型の添え名は「世界を進める者」。中期ペルシア語ではアシュタード。
神話・物語
この女神をめぐっては、まず奇妙な事実がある。名目上この女神に捧げられたヤシュト第18が存在するが、その讃歌のなかに彼女の名は一度も現れない。アルシュ(正しい)という語がたまたま含まれていたことが、この献辞の理由だったのではないかと考えられている。文献の帰属と内容が食い違う例として、しばしば引かれる。
実際にこの女神が現れるのは、ラシュヌと組んだ場面である。「ラシュヌ・アルシュタート」という双数複合の形で、『ヤスナ』1.7と2.7、『ヤシュト』10.139と12.40、『シーローザ』1.18と2.18などに繰りかえし出てくる。これは終末論的な結びつきであり、死後三日目に唱えられる祈りでは、ラシュヌ、スラオシャ、ミスラとともに呼ばわれる。
『ブンダヒシュン』37.10–14では、チンワト橋で行いを検分する者として現れ、アムルタートの助力者(ハムカール)とされる。『アルダー・ウィーラーフの書』5.3では、ミスラ、ラシュヌ、ワユ、ウルスラグナとともに橋に立つ。終末を語る『ザンド・イ・ワフマン・ヤスン』7.19–20では、ナイリヨーサンハ、ミスラ、ラシュヌ、ウルスラグナ、スラオシャ、そして人格化されたフワルナフとともに、英雄ペーシュヨータンを助ける。
図像と象徴
イランにこの女神の像は伝わらない。ただしクシャーン朝の貨幣に、バクトリア文字でリシュティ(ΡΙÞΤΙ)と銘された神像が現れ、この女神に対応するとみられている。本サイトが主画像に掲げるのはフヴィシカ王の金貨で、兜をかぶり、長い槍を執って正面に立つ姿が打たれている。
ただし同定には留保がいる。アヴェスター語のアルシュティは「槍」を意味する別の語でもあり、貨幣の神像が槍を執るのはそちらに引かれた結果とも考えられる。武装した男性的な姿は、廉直を司る女神の像として素直に読めるものではない。抽象徳目の霊が貨幣の意匠に移されるとき、その姿は語の別の意味に引き寄せられることがある——そのことを示す一枚として掲げる。
系譜と関係
暦では各月の第26日を司る。同じ日の祈りは、伝承でザラスシュトラが隠棲したとされる山ウシダレナ(「知恵を保つ者」)と結ばれている。『ウィスプラド』7.2では、一度ダエーナーと同一視される箇所がある。