ウルスラグナ
ワルフラーン · ワフラーム · バフラーム
ゾロアスター教のヤザタで、勝利を司る。名は「障害を打ち破ること」に発する。十の姿に変じて現れ、サーサーン朝では戦勝の神として最も篤く崇められた。
解説
概要
ウルスラグナ(アヴェスター語 vərəθraγna)は、ゾロアスター教のヤザタで、勝利を司る。名は「障害」を意味する verethra に発し、それを打ち破ることの神格化である。中期ペルシア語ではワルフラーンとなり、ワフラーム、バフラームなどの形で新ペルシア語に伝わった。古いイランにおいて、勝利を与える神としてこの神格がもっとも広い人気を得ていたとみられている。
神話・物語
『ヤシュト』第14、通称バフラーム・ヤシュトがこの神格に捧げられている。保存は良くないが、古い要素を多く含むとされる。そこではもっとも重く武装した者、力においてもっとも備えある者と讃えられ、人と魔の双方を相手に絶えず戦い続ける。
讃歌の冒頭は、この神格が現れる十の姿を数え上げる。強い風、黄金の角をもつ雄牛、黄金の飾りをつけた白馬、盛りのついた駱駝、猪、猛禽、雄羊、野生の山羊、十五歳の輝かしい若者、そして黄金の刃の剣をもつ人である。武力だけの神ではなく、男性的な活力を授け、癒す力をもつとも語られる。猪の姿で戦場にミスラを先導する姿は、後世の宗教画に好んで描かれた。ミフル・ヤシュト10.70は、洞察の女神チスターとともにこの神格をミスラの主要な随伴者に数える。
語源をめぐっては議論がある。この名はヴェーダのヴリトラハン——ヴリトラを討ったインドラの形容辞——と同じ語形に遡る。イランでインドラが魔神の側へ落とされた結果、形容辞だけが独立した神格として崇拝され続けたとする説と、もとイランにあった神とインドラがヴェーダの成立に際して合体したとする説が並び立ち、決着していない。
図像と象徴
この神格の図像は、ギリシア文化との接触のなかで形を得た。セレウコス朝・アルサケス朝の時代、ウルスラグナはアレースと同一視され、またヘラクレスと結ばれてアルタグネスというギリシア語名で呼ばれた。コンマゲネ王アンティオコス1世の碑文には、ヘラクレス・アルタグネス・アレースの三つの名が一つの神格として並ぶ。本サイトが主画像に掲げるのは、その王の墳墓ネムルト・ダーの西テラスに置かれた巨像の頭部である。
ビーソトゥーンの街道沿いには、獅子の皮の上に横たわり、杯を手に、足もとに棍棒を置く等身大の岩彫がある。旅人と道の守護者としての性格がここに現れている。サーサーン朝に入ると、王冠の意匠に翼あるいは猛禽の頭として現れ、バフラーム2世の王冠に最初の例が確認される。猪と鷲の頭は銀器・織物・漆喰・印章・貨幣に広がり、讃歌の十の姿が造形の語彙となった。
系譜と関係
アシャ・ワヒシュタの助力者(ハムカール)に数えられ、暦では各月の第20日を司る。サーサーン朝の暦改革では火星の名がバフラームとされた。マリー・ボイスによれば、最上位の聖火を指す今日の呼称アータシュ・バフラームは、本来「勝利の火」を意味する形容から「バフラームの火」へと理解が移ったものである。
文化的足跡
サーサーン朝ではバフラームの名を負う王が六人を数える。アルダシール1世は自らこの神格の聖火を建て、以後の歴代の王が参詣した。アルメニアの英雄神ヴァハグンはこの神格に発し、竜ヴィシャップを討つ者として語られる。バフラームは今日もイランの人名として用いられている。