アムルタート
アムルダード · モルダード · Amərətāt
ゾロアスター教のアムシャ・スプンタの一柱で、女神とされる。名は「不死」を意味し、植物を守る。完全を司るハルワタートと常に対で語られ、終末の不死の飲料はこの霊に帰される。
解説
概要
アムルタート(アヴェスター語 amərətāt)は、アムシャ・スプンタの一柱で、名は「不死」を意味する。サンスクリットのアムリタトヴァ(不死性)と同源で、インドの甘露アムリタと語根を共有する。中期ペルシア語でアムルダード、新ペルシア語でモルダード。アヴェスター語では女性名詞であり、女神とされる。
神話・物語
『ガーサー』の段階から、完全を司るハルワタートと不可分に語られる。二柱がそれぞれ植物と水の守護者とされるのは後代の展開で、被造物の一つずつを霊に割り当てるアムシャ・スプンタの体系に沿うものである。
『ブンダヒシュン』はこの霊に創世の一場面を与える。アンラ・マンユが原初の植物を枯らしたとき、アムルタートはそれを砕いて水に混ぜ、ティシュトリヤがその水を雨として世界に撒いた。そこから無数の植物が生じたという。植物の死から植物の多様が生まれるという筋である。
不死の性格は白きハオマ(ガオケレナ)と結ばれる。終末の刷新に際して、この植物から不死の飲料が調えられると説かれ、あるいはその飲料はこの霊自身から生じるとも語られる。敵対者は魔神ザリチュである。
図像と象徴
この霊を表した図像は伝わらない。本サイトが主画像を掲げないのはこのためである。目に見える形をとるのは植物のほうで、とりわけ白きハオマがその働きを担った。ハルワタートと対で飲食に配されたため、食事を黙って取る作法もこの二柱への敬意として説明される。
系譜と関係
スプンタ・アールマティ、ハルワタートとともに三女神をなす。『ブンダヒシュン』26.8は三柱をアフラ・マズダーの左手に置き、それぞれ大地・水・植物に配する。ヤザタの階梯では、審判に関わるラシュヌとアルシュタート、大地の霊ザムが助力者(ハムカール)とされる。暦では各月の第7日と年の第5月を司る。
文化的足跡
ハルワタートと並べたハルワタート・アムルタートの名はソグド語文献に現れ、イスラームの伝承ではバビロンに遣わされた天使ハールートとマールートの名の由来と考えられている。イラン暦の第5月モルダードにその名が残る。