アルクマイオーン
アルクメオーン · アルクマイオン · アルクメオン
アムピアラーオスとエリピューレーの子。エピゴノイを率いてテーバイを落とし、父の遺言に従って母を殺して狂気に追われた。
解説
概要
アルクマイオーン(Ἀλκμαίων / Alkmaiōn)は、予言者アムピアラーオスとエリピューレーの子で、エピゴノイの指揮官である。父の遺言に従って母を殺し、そのために生涯を追われ続けた。
母殺しと狂気、そして浄めを求める放浪という筋はオレステースと重なるが、彼の場合は浄めが最後まで完結しない。土地を移るたびに災いが再発し、最後は宝物をめぐる欺きによって殺される。
神話・物語
十年前、父は妻の裏切りを知りながらテーバイ攻めに出て死んだ。出発にあたり、成人したら母を殺してテーバイを攻めよと子らに命じている。
エピゴノイの遠征が計画されたとき、デルポイの神託は彼を指揮官に立てれば勝つと告げた。ポリュネイケースの子テルサンドロスは、母にハルモニアーの婚礼衣を贈って彼の参戦を説得させる。彼は父の遺言を先送りにして出征し、テーバイ王ラーオダマースを討って都市を落とした。
帰還後、母が二度買収されていたことを知って彼女を殺す。弟アムピロコスも加わったとする伝えもある。母の呪いを受け、エリーニュスに追われて狂気に陥った彼は、プソーピスの王ペーゲウスに浄められ、その娘アルシノエーと結婚して首飾りと衣を贈った。ところが土地が実らなくなり、神託は彼が去れば戻ると告げる。
放浪の末、彼はアケローオス河の水源に至り、河神に浄められてその娘カリロエーと結婚した。新しい妻が首飾りと衣を求めたため、彼はペーゲウスのもとへ戻り、デルポイに奉納すれば狂気が解けると偽って返却させる。真意を知った王は二人の子に命じて彼を待ち伏せさせ、彼は殺された。
のちにカリロエーがゼウスに願うと、幼い息子たちアムポテロスとアカルナーンは一夜で成人し、父の仇を討った。浄めが土地を移るたびに無効になり、宝物が持ち主を替えるたびに人を殺す——彼の物語は、罪と呪物の両方が終わらないことを示している。
エウリピデスの異伝では、狂気の間にテイレシアースの娘マントーとのあいだにアムピロコスとティーシポネーをもうけ、コリントス王クレオーンに預けたという。
図像と象徴
彼を名指しできる古代の作例は知られていない。母殺しという主題は陶画で盛んに描かれたが、そこに現れるのはほぼ例外なくオレステースである。二つの物語が同じ型を共有していたために、図像の側では一方に吸収されたと考えられる。本ページに主画像を置いていないのはこのためである。
系譜と関係
父アムピアラーオス、母エリピューレー。弟アムピロコス、姉妹エウリュディケーとデーモーナッサ。予言者メラムプースの家系に属する。
妻はプソーピス王ペーゲウスの娘アルシノエー(アルペシボイアとも)、次いでアケローオスの娘カリロエー。カリロエーとの子アムポテロスとアカルナーンの名は、アカルナニア地方の名祖とされた。
文化的足跡
三大悲劇詩人はいずれも彼を題材とした。アイスキュロス『エピゴノイ』、ソポクレース『アルクメオーン』『エピゴノイ』『エリピューレー』、エウリピデス『プソーピスのアルクメオーン』『コリントスのアルクメオーン』——いずれも散逸し、断片と梗概のみが残る。上演回数の多さに対して現存作がないという落差は、テーバイ伝説の受容を考えるうえでしばしば指摘される。