テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
テイレシアース
PLATE — ΤΕΙΡΕΣΊΑΣ
HELLAS · ギリシア神話
ΤΕΙΡΕΣΊΑΣ

テイレシアース

ティレシアス · テイレシアス · ティーレシアース

Jastrow (2006) PUBLIC DOMAIN

ギリシア神話のテーバイの盲目の予言者。男女両方の生を経験し、死後も冥界で知性を保ち、オデュッセウスに帰路を告げた。

01

解説

概要

テイレシアース(Τειρεσίας / Teiresias)は、テーバイの予言者である。エウエーレースとニュンペーカリクローの子で、父はテーバイ建国の種人スパルトイの末裔とされる。盲目であることと、男女両方の性を生きたこととが、この人物を他の予言者から分けている。

神話・物語

失明の由来は二系統に割れる。ひとつは、水浴するアテーナーの姿を見てしまって視力を奪われたが、母カリクローの嘆願により(あるいはアプロディーテーの憐れみによって)鳥の声を聞き分ける力を得たとするもの。

もうひとつは、オウィディウス『変身物語』などが伝える。キュレーネー山で交わる二匹の蛇を打った彼は女に変わり、七年(九年とも)を女として過ごしたのち、同じ場面をふたたび打って男に戻った。のちにゼウスヘーラーが男女どちらの快楽が大きいかを争い、両方を知る彼に判定を求める。女のほうが九倍だと答えた彼はヘーラーに視力を奪われ、ゼウスから償いとして予言の力と長い寿命を与えられた。

彼はテーバイの七代の王にわたって仕えたという。ソポクレース『オイディプース王』では、先王殺害の犯人を問われて口を閉ざし、王に罵られてついに「あなた自身だ」と告げる。真実を握りながら語るまいとする予言者と、真実を求めて破滅する王という配置は、以後のギリシア悲劇の型となった。『アンティゴネー』ではクレオーンに警告し、エウリピデス『バッコスの信女』では老カドモスとともにディオニューソスの行列に加わる。ナルキッソスについては「己を知らずにいれば長生きする」と予言した。

死後もペルセポネーの計らいで知性を保ったとされ、『オデュッセイア』第11巻のネキュイアでは、オデュッセウスが冥界に呼び出して帰路と最期を告げられる。血を求めて群がる亡霊のなかで、彼だけが生前と変わらぬ判断力を持つ。

図像と象徴

図像は多くない。確実な作例が、本ページの主画像であるルカニア赤絵式カリュクス・クラーテール(前380年頃、ドロンの絵師、パリ・フランス国立図書館メダイユ室 422)である。エウリュロコスとペリメーデースに挟まれて座るオデュッセウスの前に、地面から老人の頭だけが現れる。冥界から呼び上げられた亡霊を、地表に出た頭部で表すという解決であり、画面の下端そのものが冥界との境になっている。

デルポイのレスケー(集会所)にポリュグノートスが描いた大壁画《ネキュイア》にも彼の姿があったことが、パウサニアースの記述から知られる。壁画そのものは失われている。

系譜と関係

父エウエーレース、母カリクロー。娘は同じく予言者のマントーで、その子モプソスもまた予言者である。予言の力が三代にわたって受け継がれる家系として語られる。

文化的足跡

両性を経験した盲目の予言者という造形は、近代文学が繰り返し引いた。エリオットの長詩『荒地』(1922年)は、この人物を詩全体を見通す視点として据えている。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q656881 — 骨格データの出典