ザム
ザム · ザミーン · Zam
ゾロアスター教の大地を表す小さな神格で、語は普通名詞と神名を兼ねる。印欧語族の大地を意味する語根に遡り、リトアニアのジェミナ、ギリシアのセメレーと同語源。大地の神聖さが、死体を鳥に食わせる鳥葬の根拠である。
解説
概要
ザムは、ゾロアスター教の「大地」の観念——土地と土壌の意味においても、世界の意味においても——を指すアヴェスター語である。
大地はゾロアスター教の伝統において原初の元素とみなされ、「大地」の顕現である小さな神格ザムによって表される。
この語自体は、現代ペルシア語のザミーンに変わり、バルト語のゼメス、スラヴ語のゼム、セルビア語のゼムリャ、ギリシア・トラーキア語のセメレーと同語源である。いずれも大地を意味する。
印欧語族の大地
「ザム」は、大地を意味するインド・ヨーロッパ語族の古い語にさかのぼる。リトアニアの大地の女神ジェミナ、スラヴの「母なる大地」(マーチ・シラ・ゼムリャ)、ラテン語の「フムス」(土)も、同じ語根に由来するとされる。英語の human も、「土から造られた者」を意味するラテン語を通じて、この語根につながると考えられている。ザムは、大地を意味するふつうの言葉であると同時に、神の名でもあり、両者が分かれていない。ゾロアスター教の小さな神々にはこの型が多く、アスマン(天)、アータル(火)、アープ(水)も同じである。
四つの元素
ゾロアスター教では、大地、水、火、空気が聖なるものとされ、これらを汚すことは重い罪であった。遺体は穢れたものとされたため、土に埋めれば大地を、焼けば火を、水に流せば水を汚してしまう。そのためゾロアスター教徒は、遺体を「沈黙の塔」(ダフマ)に置いて鳥に食べさせ、骨だけが残ってから納めた。大地が聖なるものであることが、葬り方を決めていたのである。
祭日
ゾロアスター教の暦では、毎月二十八日がザムの日である。大地を司るのは大天使(アムシャ・スプンタ)の一柱である女神スプンタ・アールマティ(スパンダールマズ)で、ザムはその配下にある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、大地と月の神々を描いた図である(マニ教の写本断片、ベルリン MIK III 6278)。
関わる神格・伝承
スプンタ・アールマティの下にある。アスマン、アータル、アープと元素の神格をなす。
文化的足跡
現代ペルシア語の「ザミーン」(大地、土地)は、この語の直系である。「イーラーン・ザミーン」(イランの大地)は、イランを指す文語的な表現である。
なおゾロアスター教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格と伝承に関する学術的な整理である。