ヴィシュヴァーミトラ
カウシカ王 · ブラフマルシ · ガーヤトリーの見者
もとはクシャトリヤの王でありながら、苦行によって梵仙の位に達した聖仙。ガーヤトリー・マントラを見た者とされている。
解説
概要
ヴィシュヴァーミトラ(Viśvāmitra / विश्वामित्र)は、サプタルシ(七聖仙)の一人に数えられる聖仙である。もとはクシャトリヤの王であったが、ヴァシシュタの如意牛を奪えなかったことを機に苦行へ入り、ついにブラフマルシ(梵仙)の位に達した。生まれによらず行によって身分を越えた例として語られる。『リグ・ヴェーダ』第三巻の作者とされ、そこに含まれるガーヤトリー・マントラは今日も最も広く唱えられる真言である。
神話・物語
カウシカ王として国を治めていた頃、軍を率いてヴァシシュタの庵を訪れた。聖仙は如意牛の力で全軍を饗応する。その力を欲した王が牛を求めて断られ、力ずくで奪おうとしたところ、牛の生み出した兵によって軍は壊滅した。武力はバラモンの力に及ばぬと悟った彼は、王位を捨てて苦行に入る。
苦行の道は平坦ではなかった。ラージャルシ(王仙)、マハーリシ(大仙)と位を上げてもなお、ヴァシシュタは彼をブラフマルシとは認めなかった。神々は彼の苦行が積み上げる力を恐れ、インドラはアプサラスのメーナカーを遣わして行を妨げさせる。彼は誘惑に負けて十年を彼女と過ごし、娘シャクンタラーをもうけた。我に返った彼は再び苦行に入る。
次に遣わされたのがラムバーであったが、今度は誘惑を退け、怒りに任せて彼女を石に変えた。だが怒りを用いたことで苦行の力は失われる。以後、彼は千年にわたって沈黙のうちに行を続けた。ついにブラフマーが現れ、さらにヴァシシュタ自身が彼をブラフマルシと認めたことで、長い争いは終わった。
『ラーマーヤナ』では、羅刹に祭祀を妨げられた彼がダシャラタのもとを訪れ、まだ少年のラーマとラクシュマナを借り受ける。二人に神々の武器を授け、羅刹を退けさせ、そののちミティラーへ導いてシーターとの婚姻の場に立ち会わせた。物語を動かし始める人物である。
図像と象徴
固有の像容は伝わっておらず、独立した礼拝像の伝統もない。図像に現れるとすれば、苦行する姿か、メーナカーに惑わされる場面である。象徴となるのは苦行そのもので、生まれによらず行によって位を得た者として、彼はしばしば例外的な事例として引かれる。
系譜と関係
もとはクシャトリヤのカウシカ王。ヴァシシュタとは終生の対手であり、最後には和解した。メーナカーとの間に娘シャクンタラーがあり、その子バラタがバーラト(インド)の名の由来とされる。王ハリシュチャンドラを試したこと、トリシャンクを天へ送ろうとして新たな星座を作ったことも語られる。
文化的足跡
『リグ・ヴェーダ』3.62.10のガーヤトリー・マントラは彼が見たものとされ、今日でもヒンドゥーの日々の勤行で最も広く唱えられる。生まれではなく行いによって身分は決まるという主張の典拠として、彼の生涯は近現代の社会改革の議論でもしばしば引かれてきた。