ティートーノス
ティトノス · ティートーノス · Tithonus
暁の女神エーオースの恋人となったトロイアの王子。女神が不死を願ったが不老を願い忘れたため、死ぬことなく老い続け、ついに声だけが残って蝉に変えられたという。テニスンの詩『ティトーノス』の主題。
解説
概要
ギリシア神話において、ティートーノス(Tithonus)は暁の女神エーオースの恋人であった。トロイアの王子で、ラーオメドーン王とナーイアスのストリューモーの子である。
前5世紀のアテーナイの壺絵に反映される神話は、ティートーノスを吟遊詩人として想い描いた。アキレウスの画家のオイノコエー(酒注ぎ)に描かれた竪琴が、これを証している。
神話・物語
エーオースはティートーノスの美しさに惹かれ、これを攫って夫とした。そしてゼウスに、彼を不死にするよう願った。ゼウスはこれを聞き入れた。
しかしエーオースは、不老を願うことを忘れていた。ティートーノスは死ぬことなく老い続けた。
やがて手足は動かなくなり、声だけが残った。エーオースは彼を部屋に閉じ込め、扉を閉ざした。そこで彼は絶え間なく喋り続けたという。
一部の伝えでは、ティートーノスは最後に蝉に変えられた。蝉が絶えず鳴き続けることが、この結末に対応する。
解釈
『ホメーロス風アプロディーテー讃歌』が、この物語の最も古い記述である。讃歌は、アプロディーテーがアンキーセースに対して、自らは彼を不死にすることを望まない理由として、この物語を語る。
不死と不老が別のものであるという点が、この物語の核心である。願いの言葉の不備が、永遠の苦しみをもたらす。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エーオースとティートーノスを描いた赤絵式キュリクスである(ボストン美術館蔵 95.28)。
壺絵において、エーオースがティートーノスを追う場面は繰り返し描かれた。女神が若い男を追うという構図は、通常の男女の関係を反転させたものとして、古代の美術に好まれた。
関わる神格・伝承
父はラーオメドーン、兄弟はプリアモス。妻はエーオース、子はメムノーン(エチオピアの王、トロイア戦争で戦死)とエマティオーン。
文化的足跡
テニスンの詩『ティトーノス』(1860年)は、この人物の独白として書かれ、老いと不死の悲惨を主題とする。「私は死ぬことを求めるのに、死は来ない」——英詩における老いの表現の代表作である。
小惑星(6998)ティートーノスは、この人物にちなんで命名された。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。