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タマヨリビメ
PLATE — 玉依毘売
YAMATO · 日本神話
玉依毘売

タマヨリビメ

タマヨリヒメ · 玉依姫 · 玉依媛

『神仏図会』玉依姫尊/玉蘭斎貞秀(歌川貞秀)画・国立国会図書館デジタルコレクション PUBLIC DOMAIN

海神ワタツミの娘でトヨタマヒメの妹。姉の残した子ウガヤフキアエズを育て、その妻となって神武天皇を産んだとされる。

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解説

概要

タマヨリビメ(玉依毘売、玉依姫)は、記紀に現れる女神。海神ワタツミの娘で、姉トヨタマヒメの残した子ウガヤフキアエズを育て、のちにその妻となって初代神武天皇らを産んだとされる。ただしこの名は、特定の一柱を指す固有名詞とは限らない。「タマ」は神霊、「ヨリ」は憑りつくことであり、タマヨリビメとは「神霊の依り代となる女性」を意味する。記紀や風土記には、系譜も物語も異なる複数のタマヨリビメが現れる。

神話・物語

海辺の産屋で姉が子を産み、その姿を見られて海へ帰ったとき、残された子のもとに留まったのがタマヨリビメである。姉に代わって甥を養い、成長ののちにその妻となった。二神のあいだに彦五瀬命・稲飯命・三毛入野命・彦火火出見尊が生まれ、末子の彦火火出見尊が神武天皇にあたる。

神話における役割はこれに尽きるが、位置は重い。姉が海へ去り、断たれた海と陸との縁を、妹が地上に留まることで繋ぎ直している。天つ神の血に海神の血が二代続けて重ねられる過程で、その二代目を担うのがこの女神である。

図像と象徴

タマヨリビメを主題とした古い図像は多くない。姉の変身という劇的な場面を持たないためであり、絵画に描かれる場合も、産屋の場面で姉に付き従う姿として現れることが多い。本項に掲げるのは江戸後期の『神仏図会』に載る玉依姫尊の図で、父ワタツミやオオヤマツミの一族と同じ版本に属する。なお、彫刻としては吉野水分神社(奈良県)の玉依姫命坐像(建暦元年=1211年、木造彩色・玉眼、重要文化財)が名高いが、この像が祀るのは水を分かつ子守の神としての玉依姫命であり、海神の娘とは別系統の同名神である。

読み解きの手がかりは、むしろ名にある。倉塚曄子は、この名を固有名詞ではなく普通名詞と見るべきだとし、祭儀において神の降臨に立ち会う巫女が、神話のうえでは神に感精して子を産む母として形象化されたものだと論じた。柳田國男も、神霊を宿しうる巫女の総称と解している。そう読むとき、記紀に散らばる同名の女神たちが一つに繋がる。

『日本書紀』第九段の一書には、高皇産霊尊の孫にあたる玉依姫命が現れる。『山城国風土記』逸文は、賀茂建角身命の娘の玉依日売が賀茂川の川上から流れてきた丹塗矢を拾い、これに感精して賀茂別雷命を産んだと伝える。この玉依日売は賀茂御祖神社(下鴨神社)の祭神であり、賀茂社の御阿礼神事を説話に写したものと考えられている。『古事記』崇神天皇条の三輪山伝説に現れる活玉依毘売も、正体を明かさぬ神の妻問いを受けて三輪氏の祖につながる子を生む。いずれも、神を迎えて子を産むという同じ働きを負っている。

系譜と関係

父は海神ワタツミ、姉はトヨタマヒメ。夫のウガヤフキアエズは姉の子であり、自身から見れば甥にあたる。神武天皇の母であり、姉から見れば甥の妻でもある。

賀茂社の玉依日売、三輪山の活玉依毘売とは、系譜のうえでは別個の存在である。同じ名を共有するのは血縁によるのではなく、神を迎える巫女という職掌を名に負っているためだと解される。神名がつねに一個の人格を指すとは限らないことを、この女神は端的に示している。

文化的足跡

神武天皇の母として、宮崎神宮や鹿児島神宮をはじめとする日向三代ゆかりの社に祀られる。一方、賀茂の玉依日売を祀る賀茂御祖神社は、縁結びと安産の社として広く知られる。同名の女神が別系統の信仰を集めているのは、この名が本来は職掌の呼称であったことの名残でもある。

近代以降、タマヨリビメという語は「霊が依り憑く者」の意で民俗学や宗教研究の術語としても用いられ、現代の創作では巫女的な存在の呼称として使われることがある。記紀が伝えるのは、姉に代わって甥を育て、その妻となって初代天皇を産んだ女神である。

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領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承点線=異伝・別系統

玉依毘売
タマヨリビメ
日本神話
鸕鶿草葺不合尊
ウガヤフキアエズ
配偶者
収載データなし
玉依毘売
タマヨリビメ
日本神話
収載データなし
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資料

Wikidata
Q3082751 — 骨格データの出典
Commons
Tamayori-hime — 図像カテゴリ