ロド
ロード · スード · Род
東スラヴと南スラヴの民間信仰に現れる、氏族・祖先・運命の擬人化。運命を定める女たちロジャニツァとともに語られる。神として祀られたかどうかは決着していない。
解説
概要
ロド(Род、「氏族・生まれ」)は、東スラヴと南スラヴの民間信仰に現れる、氏族・祖先・運命の擬人化である。南スラヴではスード(Суд、「裁き」)とも呼ばれる。通例、出産に立ち会って人の運命を定める女たち——ロジャニツァ(南スラヴではスジェニツァ)——とともに語られる。
神であったかどうかは決着していない。運命や血縁の擬人化としてキリスト教以前の観念にあったことは広く認められるが、神として祀られたか、まして最高神であったかについては、真っ向から対立する見解が並んでいる。ウラジーミル1世がキエフの丘に立てた神々の列にロドの名がないことも、議論の材料になってきた。
神話・物語
物語はない。名が現れるのは、キリスト教側が異教の習俗を戒める文章のなかだけである。
11世紀の『神学者聖グレゴリオスの言葉』は、スラヴ人がペルーンより前にロドとロジャニツァに供物を捧げ、さらにその前には吸血鬼(ウピリ)とベレギニャに捧げていたと記す。『あるキリストを愛する者の言葉』は、正規の食卓のほかにロドとロジャニツァのための膳と器を並べる者たちを咎める。15世紀の福音書注記の一節は、ロドが空に座って地に土くれを投げ、そこから子が生まれるのではない、創造するのは神であってロドではない、と言う。16世紀の懺悔規定では、ヴィラに祈った者、ロドとロジャニツァやペルーン、ホルス、モコシを祝って飲食した者に、三年の断食と平伏が課された。
供物に血は伴わない。パン、蜂蜜、チーズ、粥(クチャ)である。子の初めての散髪(ポストリジニ)もロドとロジャニツァに捧げられ、切った髪が供えられた。
つまり残っているのは、禁じる側の言葉ばかりである。ロドが何であったかを、信じていた当人の言葉で知る手立てはない。
図像と象徴
図像はない。祭具も特定されていない。本項に主画像を置いていないのはそのためである。
ルィバコフはズブルチの石像をロドの像と見た。円や渦の文様、六弁の花を円に収めた意匠をロドの位格の徴とする説明も、彼に由来する。ただしこれらは、ロドをスラヴの最高神とする彼の構想に沿った同定であって、遺物そのものが名を語るわけではない。
現在ロドの名で流通している図像は、いずれも20世紀後半以降の新異教運動のなかで作られたものである。
系譜と関係
スラヴ祖語 *rodъ は「家族、誕生、出自、氏族」を意味し、同時に「実り、収穫」も意味した。ブリュクナーはアヴェスター語 rada-「守護者、保護者」との類似も指摘している。
ルィバコフは、ロドを紀元1千年紀の父系農耕社会におけるスラヴの最高神と考えた。のちに地位を下げられたために、ウラジーミルの神々の列に入っていないのだと説明する。『聖グレゴリオスの言葉』の記述——亡霊、次いでロドとロジャニツァ、最後にペルーン——を、アニミズムから自然力崇拝を経て単一神崇拝へ進む発展段階の反映として読んだ。
クレインとズボフはこれを批判する。ビザンツでは占星術の天宮図が「系譜(genealogia)」と呼ばれ、これは字義どおりには「ロドスロヴォ」と訳しうる。古ルーシの書き手は、聖書やギリシアの神学書から借りた出来合いの語句を用いてロドとロジャニツァを描いたのであって、キリスト教以前の宗教にその祭祀があったわけではない、というのが二人の見立てである。ズボフはさらに、東スラヴには神々の広い系譜など存在せず、神はペルーン一柱であったと論じた。
ギェイシュトルはロドを社会組織の神と見て、ローマのクィリーヌス、ウンブリアのウォフィオヌス、ケルトのトゥータティスと並べた。いずれも名が「共同体」「人々」「氏族」に由来する神である。ただし、インドのルドラと結びつけることは退けている。豊穣と富の働きから、彼はベラルーシの豊かさの擬人化スポルをロドと同一視した。シイェフスキは、ロドが血縁を霊的連続の象徴として体現していると述べる。
なお、6世紀のプロコピオスはスラヴ人について、彼らは雷を作る一柱の神を万物の主とし、運命というものを知らず、人の世に運命が力を持つとは認めない、と書いている。運命の神格を認めるかどうかの議論では、この一節が繰り返し引かれてきた。
文化的足跡
ロドの祭日を12月23日(ロシコ)あるいは12月26日(プロファントヴァー)とする説がある。クチャを口にする前に、家長が最初の一匙を聖なる隅に投げ上げる習わしは、ウクライナに今も残る。ロドの祭祀の名残は19世紀まで続いたとされる。
現代では、ロドはスラヴ新異教運動の中心に据えられている。運動の名ロドノヴェーリエ自体、「родная вера(固有の信仰)」の родная がロドと語根を共有する。ただし、そこで語られるロドの像の多くは、偽作と証明されている『ヴェレスの書』と、スラヴの信仰をヴェーダ神話に重ねるロマン主義的な著述に由来する。イングリズムやウクライナ固有民族信仰といった民族主義的な分派では、ロドは万物を生んだ唯一の根源神とされる。
血縁の観念としてのロドと、現代の運動が語る創造神ロドとは、切り分けて読む必要がある。両者を同じものとして扱う紹介は、日本語圏にも少なくない。