オモイカネ
オモヒカネ · 思金神 · 思兼神
高御産巣日神の子で知恵の神。岩戸隠れで天照大御神を引き出す策を立て、国譲りで派遣する神を選定し、天孫降臨で邇邇芸命に随伴した。名は「多くの思慮を兼ね備える」の意。
解説
概要
オモイカネ(歴史的仮名遣:オモヒカネ、思金、思兼)は、日本神話に登場する神。『古事記』では思金神、常世思金神、『日本書紀』では思兼神、『先代旧事本紀』では八意思兼神などと表記される。
高御産巣日神の子であり、天忍穂耳命の妻である万幡豊秋津師比売命の兄弟。
神話での記述
最も有名な話では、岩戸隠れの際に、天の安原に集まった八百万の神に天照大御神を岩戸の外に出すための知恵を授けたこととされている。常世の長鳴鳥を鳴かせ、八咫鏡と八尺瓊勾玉を作らせ、天宇受売命に舞わせ、天照大御神が岩戸を開けたところを天手力男神に引き出させる——この一連の策を立てたのが思金神である。
国譲りでは、葦原中国に派遣する神の選定を行っている。天菩比神、天若日子、そして建御雷神の派遣を提案した。
その後、天孫降臨で邇邇芸命に随伴した。天照大御神は三種の神器に思金神、天手力男神、天石門別神を副え、「この鏡を我が御魂と思って祀れ。思金神は前の事を取り持って政をせよ」と命じた。
名の意味
八意思金神の「八」を「多い」、「意」を「思慮」と解し、「八意」は思金神への修飾語、「思」を「思慮」、「金」を「兼ね」と解し、名義は「多くの思慮を兼ね備えていること」と考えられる。
性別がはっきりとしていない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『神仏図会』所収の天思兼尊の図である。
知恵の神という位置が、この神を規定する。天照大御神の岩戸隠れ、国譲り、天孫降臨——高天原の三つの主要な場面で、思金神は策を立てる者として現れる。神々の会議において問題を解決するのは、力ではなく知恵である。
ギリシアのアテーナーやメソポタミアのエンキと同じく、神々の助言者の型に属する。
関わる神格・伝承
父は高御産巣日神。子は天表春命(阿智祝の祖)、天下春命(知々夫国造の祖)。
文化的足跡
長野の阿智神社、秩父神社、東京の気象神社が主要な鎮座地である。学業成就・知恵の神として信仰される。気象神社では、「八意」を八つの気象条件と解して天候の神とする。
なお神道は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。