ノドンス
ノデンス · ノドンティ · Nodons
ブリタンニアで崇拝された癒しの神。セヴァーン河口を見下ろす神殿に犬の奉納像が多数納められ、マールスと同一視された。
解説
概要
ノドンス(*Nodens)は、ローマ支配下のブリタンニアで崇拝された癒しの神である。姿を描いた像は一つも伝わらない。グロスターシャーのリドニー・パークにある聖所から出土した奉納板が、この神と犬との結びつきを示す。犬は古代において癒しの象徴と結びつく獣であった。
名が確実に記録されているのはもう一箇所、ランカシャーのコッカーサンド・モスだけである。碑文の多くはマールスと同一視するが、それは戦の神としてではなく癒し手としてのマールスであり、ある呪詛文書では狩猟神シルウァーヌスと結びつけられている。名はアイルランドのヌアザ、ウェールズのニーズと同源にあたる。
神話・物語
物語は伝わらない。この神について知りうるのは、碑文と聖所の出土品に限られる。
神名は与格形ノデンティまたはノドンティから再建されたもので、ケルト祖語の語幹 *Nowdont- に遡る。中期アイルランド語のヌアズ、中期ウェールズ語のニーズ——のちに頭韻の同化によってスィッズとなった——はその言語上の兄弟にあたる。語源そのものは定まっていない。ジョン・ケアリーは、これまでに出された語源のうち確信をもって受け入れられるものは一つもない、と述べている。
有力な三つの読みがある。ウェールズ語 nudd(霧、靄)に結びつけて印欧祖語 snewdh-(霧、雲)に遡らせる説。「捕らえる、獲得する」を意味する語幹 néud- に結びつけ、リドニーの出土品に見える漁と狩の主題、そしてヌアズとスィッズの銀の腕と結びつける説。そして「必要、強制」を意味する *neh₂u-t- に遡らせる説である。いずれも音韻上の難点を残す。
図像と象徴
この神を人の姿で描いた作例は見つかっていない。主画像に掲げるのは、セヴァーン河口を見下ろす断崖の上に立つリドニー・パークの神殿跡である。
神殿は72×54メートルの矩形で、鉄器時代の丘砦の内側に築かれている。北西端は三つの小室に分かれており、病を得た巡礼が眠って夢に神の顕現を見る施設——インクバティオ——と解されてきた。セヴァーン・ボア(海嘯)の始まる地点を望む立地も、選定の理由とみられている。1805年にチャールズ・バサーストが、1928年から翌年にかけてモーティマー・ウィーラーとテッサ・ウィーラーが発掘し、詳細な報告を残した。
出土品が神の性格を語る。犬の像が十二体あり、うち一体は人の顔を持つ。神自身が獣の姿で観念されていた可能性を示す。鉄欠乏に苦しむ者に特徴的な匙状の爪を持つ青銅の腕、眼薬の棒に押す眼科医の印——ガロ=ローマ期の治癒聖所に共通する遺物である——三百二十本の留め針、三百近い腕輪、八千枚を超える貨幣。海の神と漁師とトリトンを表した青銅の浮彫も出た。犬、水、そして治癒。この三つがこの神の輪郭のすべてである。
系譜と関係
アイルランドのヌアザ、ウェールズのニーズおよびスィッズと同源である。ただしこれは名の系統上の対応であって、神格の内容が受け継がれたことを意味しない。ヌアザとスィッズがともに「銀の腕」の添え名を負うことは、*néud- 系の語源を採る研究者の根拠となってきた。ノドンス自身の碑文に腕への言及はない。
ローマの神との関係では、碑文の大半がマールスの名を添える。ただし癒し手としてのマールスであり、ガリアとブリタンニアでは戦の神が治癒の相を帯びる例が珍しくない(インテルプレタティオ・ロマーナ)。ネプトゥーヌスと結びつける碑文もあり、河口という立地と符合する。呪詛板の一つはシルウァーヌスの名を挙げる。同じ神が、癒し手とも、海の神とも、狩の神とも呼ばれている。
文化的足跡
1928年の発掘に際して、リドニーのラテン語碑文の調査に招かれたのが言語学者J・R・R・トールキンであった。彼はこの神名をヌアザおよびスィッズと結び、「捕らえる者ノドンスの魔法の手」の古い名声の反響を見て取っている。研究者は、この経験が彼の中つ国の物語に落とした影を指摘してきた。力の指輪を鍛えたエルフの工匠ケレブリンボールの名は「銀の手」を意味し、ヌアザの添え名アルゲトラウと重なる。
アーサー・マッケンの怪奇小説、そしてH・P・ラヴクラフトのクトゥルフ神話にも、この神名は取り込まれた。碑文と犬の像だけを残した神が、20世紀の幻想文学に二度、別々の形で入り込んだことになる。