テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — मङ्गल
BHARATA · ヒンドゥー神話
मङ्गल

マンガラ

ローヒタ · バウマ · クジャ

火星を司る神で、九曜の一。怒りと闘争を司り、赤い体色で牡羊に乗る。大地の女神ブーミの子とされ、火曜日の名の由来となった。

01

解説

概要

マンガラ(Maṅgala / मङ्गल)は火星を人格化した神で、ナヴァグラハ(九曜)の一つである。ローヒタ(赤き者)の別名をもち、怒り・攻撃性・戦いを司る。ヒンドゥー暦の火曜日マンガラヴァーラは、この神の名に由来する。マンガラという語自体は「吉なる」を意味するが、星としてのマンガラは凶星に数えられる。この語義と星位の食い違いは、もともと別の系統にあった語が天体名として転用されたことを示している。

神話・物語

出生譚は宗派によって異なる。ヴィシュヌ派の伝えでは、アスラ王ヒラニヤークシャが大地の女神ブーミ(プリティヴィー)を奪い、原初の海の底へ引き込んだとき、ヴィシュヌは猪身のヴァラーハとなって降り、牙で女神を受け止めてアスラを討った。引き上げられた女神が自らの妃ラクシュミーの一相であると知ったヴィシュヌは彼女と交わり、そこから生まれた子がマンガラであるという。名の「吉なる者」はこの経緯に結びつけられる。

シヴァ派の伝えはまったく別の筋を語る。シヴァがカイラーサ山で瞑想に没入していたとき、その額から三滴の汗が地に落ちた。滴から赤い肌と四本の腕をもつ美しい嬰児が生まれ、シヴァはこれを大地の女神に託して育てさせた。育ての母の名からバウマ(ブーミの子)と呼ばれるようになったとされる。血の一滴から生じたとする異伝もある。どちらの説も大地の女神を母とする点では共通しており、火星を「大地の子」と呼ぶ呼称と符合する。

マンガラという語の来歴は、神話とは別の水準にある。語は『リグ・ヴェーダ』に既に現れ、前2世紀頃の文法家パタンジャリも用いているが、そこでは占星術の語ではなく、文芸における「吉なる・成就した(シッダ)」構成を指す語であった。パーニニもI.3.1で同様の文脈に用いる。クリストファー・ミンコウスキーによれば、ヴェーダ文献には吉祥な儀礼や吉日という発想そのものが見えず、吉祥としてのマンガラは1千年紀半ば以降のインドの諸伝統で現れたものである。祭式学派ミーマーンサーは1千年紀を通じて、自派の典籍に吉祥句を置かなかった。

図像と象徴

赤ないし炎の色に塗られ、四臂で三叉戟、棍棒(ガダー)、蓮華、槍を執る。乗騎は牡羊である。『マールカンデーヤ・プラーナ』には、加護を求めて唱えるマンガラ・カヴァチャ・ストートラムが収められている。

なお、単独の神格としての確実な古作例は多くない。大英博物館が所蔵するオリッサ出土の13世紀のレリーフは水瓶と数珠を執る人物を刻み、九曜の一体でありマンガラである可能性が高いとされるが、同定には留保が付されている。九曜が一組で安置される作例のなかで理解するのが実際的である。

系譜と関係

母は大地の女神ブーミ。父はヴィシュヌ(ヴァイシュナヴァ系)またはシヴァ(シャイヴァ系)で、伝承系統によって分かれる。ラクタヴァルナ(血の色をもつ者)、ローヒターンガ(赤い身体の者)、クジャ(大地から生まれた者)、ダラープトラ(ダラーの子)といった別名は、いずれも赤さか大地との結びつきを言い表している。九曜のなかでは、ケートゥとの相性が悪いとされる。

文化的足跡

火曜日を火星の神の名で呼ぶ習慣は、インド・ヨーロッパ語圏に広く見られる。ラテン語の dies Martis は軍神マールスの日であり、英語 Tuesday はゲルマンの神ティウ(テュール)に由来する。同じ天体に各地の戦いの神が配された結果であって、神格そのものの系統関係を示すものではない。

九曜の体系は、ヴェーダ期の天体観に西アジア・ヘレニズム・ゾロアスターの占星術が重なって成立した。120年頃の『ヤヴァナジャータカ』はその体系化を示す書としてしばしば挙げられる。『アーリヤバティーヤ』(5世紀)以降の天文書はマンガラの運行を数値で記しており、写本ごとに値が異なるのは、これらの書が長く改訂を重ねられたためである。漢訳仏典を介して東アジアにも伝わり、日本では熒惑星(けいこくせい)として九曜に数えられた。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q2849275 — 骨格データの出典
Commons
Mangala — 図像カテゴリ