マクリス
マクリス · Macris · Makris
アリスタイオスとアウトノエーの娘。生まれたばかりのディオニューソスの唇を蜂蜜で潤し、ヘーラーに追放された。スケリア島の洞窟に住み、そこでイアーソーンとメーデイアが婚礼を挙げた。
解説
概要
マクリス(Μάκρις)は、ギリシア神話の女性である。養蜂を発見したアリスタイオスとテーバイの王女アウトノエーの娘で、アクタイオーンと兄妹にあたる。
神話・物語
ロドスのアポローニオス『アルゴナウティカ』第4巻によれば、マクリスはもともとアバンテス人が支配するエウボイア島に住んでいた。
ヘルメースが焼死したセメレーの胎内からディオニューソスを救い出したとき、マクリスは生まれたばかりの神を抱き上げ、蜂蜜でその唇を潤した。これを見たヘーラーは怒り、彼女をエウボイア島から追放した。
追放されたマクリスはパイアーケス人の住むスケリア島に渡り、海岸の洞窟に住み着く。島に住むデーメーテールの寵愛を受けて農業を学び、島の住人に多くの恵みをもたらしたので、パイアーケス人は彼女の洞窟を聖なる場所と考えるようになった。
その洞窟で、のちにイアーソーンとメーデイアの婚礼が行われ、二人はそこで初夜を迎えた。二人の結婚にちなんで、マクリスの洞窟は「メーデイアの聖なる洞窟」と呼ばれた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
蜂蜜が、この女性を規定する。養蜂の発見者の娘が、生まれたばかりの神の唇を蜂蜜で潤す。ディオニューソスの最初の食べ物が蜂蜜であったという設定は、葡萄酒以前の甘い飲み物としての蜂蜜酒(ミード)を連想させる。
追放された者が別の土地で恵みをもたらすという筋も見逃せない。ヘーラーの怒りによって追われた者が、デーメーテールの寵愛を受けて農業を伝える。
関わる神格・伝承
父はアリスタイオス、母はアウトノエー、兄弟はアクタイオーン。ディオニューソスの乳母の一人。
スケリア島は『オデュッセイア』のパイアーケス人の島であり、オデュッセウスが漂着した地である。マクリスの洞窟はその島にある。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。『アルゴナウティカ』の一挿話として、イアーソーンとメーデイアの婚礼の場所の由来に現れる程度である。