カイラ
カイラ · カイラ・ハン · カラ・ハン
チュルク神話の創造神で、生命の樹ウルカユンを植えた。父でも母でもある両性の存在とされ、天の第十七層に住む。鴨の姿で水の上を飛び、もう一羽に潜らせて泥を取り大地を作った。地潜り型の創世は北米にも分布する。
解説
概要
カイラ(カイラ・ハンとも)は、チュルクの人々の神話における創造の神である。父でもあり母でもあるとされ、天の第十七層に住む。始まりの水の上を鴨の姿で飛び、もう一羽の鴨に水底の泥を取ってこさせて大地を造ったと語られる。生命の樹を植えた神ともされる。ただし、今日「チュルク神話」として紹介される神々の体系には、19世紀から20世紀の民族学者による整理が多く含まれている。
なお本サイトの分類では、モンゴル・シベリアの体系に含めて扱う。
父でもあり母でもある
カイラは、父でもあり母でもあるとされる。創造に先立つ存在が両方の性をあわせ持つという構図は、アステカのオメテオトルや、フォンのマウ・リサにも見られる。一つの存在が二つの性を兼ねることで、ひとりで生み出すことができるのである。
水の底から大地を
はじめ、世界には水だけがあった。カイラは鴨の姿で水の上を飛び、もう一羽の鴨に水の底へ潜らせて泥を取ってこさせ、それで大地を造った。水の底から泥を取ってきて大地を造るという型の創世神話は、シベリアや北米、フィン・ウゴル系の人々のあいだに広く分布している。北米のアタヘンシックの物語で、ジャコウネズミが水底の泥を取ってくるのも同じ型である。この分布を、ベーリング海峡を越えた人の移動と結びつける説もある。
名と整理
カイラは「カイラ・ハン」と呼ばれるほか、「黒き王」を意味する「カラ・ハン」の名でも呼ばれることがあり、これが混同を生んできた。天の神テングリの子であり、神々のなかで最も高い位置にあるとされる。ただし、今日「チュルク神話」として示される体系は、複数の民族の伝承をまとめ上げたものであり、一つの歴史上の宗教ではない。カイラの位置づけにも、近代の民族学者による整理の影響が含まれている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
文化的足跡
日本語でこの名が挙げられることは少ない。チュルク神話を論じる文脈で言及される。
なおモンゴル・シベリアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。