ウルゲン
ウルゲン · バイ・ウルゲン · Ülgen
チュルクの創造神で、名は「富める壮大な者」を意味する。天の最上層に住み、大地と天を貫く世界樹ウルカユンをシャーマンが登って至る。冥界のエルリクと兄弟であり、天と地の対をなす。
解説
概要
ウルゲン(バイ・ウルゲンとも)は、シベリア南部のアルタイをはじめとするチュルクの人々の信仰で、世界を造った創造の神である。名は「富める」と「偉大な」を意味する語から成る。天の最も高い層に住み、始まりも終わりもないとされる。天の神テングリとはふつう区別されるが、同じものとされることもある。冥界の神エルリクとは兄弟とされ、天と冥界を分け合う。シャーマンは、天を貫く世界樹を登ってウルゲンのもとへ向かうと語られた。
なお本サイトの分類では、モンゴル・シベリアの体系に含めて扱う。
天を貫く樹
アルタイのシャーマニズムでは、天と大地と冥界を一本の樹が貫いているとされる。九つ、あるいは十六の枝を持つ白樺の樹である。シャーマンは儀礼のなかでこの樹を登り、天へ向かう。実際の儀礼では、白樺の木に刻み目をつけ、それを一段ずつ登っていく所作が行われた。北欧のユグドラシルや、シベリア全域に見られる宇宙の樹と同じ考え方である。天と地と冥界の三つの世界を樹が貫き、シャーマンがそのあいだを行き来するという構図は、シャーマニズムの核心にある。
天の層
天は十六、あるいは十七の層に分かれており、ウルゲンはその最も上の層に住むとされる。儀礼のなかで、シャーマンは天の層を一つずつ昇っていく様子を語り、それぞれの層には門番がいて、越えるべき試練があるという。ウルゲンには七人の息子と九人の娘があり、娘たちはシャーマンに霊感を授けるとされる。
白い馬の犠牲
ウルゲンには、白い馬が犠牲として捧げられた。アルタイのシャーマンの儀礼は、19世紀のロシアの記録に詳しく残っている。ただし、これらの記録は正教会の宣教師や民族学者によるもので、土地の人々の営みを外から書き留めたものである点に注意が要る。
天と冥界の兄弟
ウルゲンは、冥界の神エルリクと兄弟とされる。ウルゲンが天を、エルリクが冥界を治め、善と悪、天と地の対がこの二柱に割り当てられている。ゾロアスター教の影響を指摘する説もあるが、確かな証拠はない。アルタイの創世神話では、エルリクがウルゲンに命じられて大地を造る泥を取ってくる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
テングリと同じものとされることがあり、エルリクの兄弟である。
ウルゲンの兄弟に、豊穣と知恵の神で弓の名手のメルゲンがいる。
文化的足跡
ロシア連邦のアルタイ共和国では、ウルゲンの名が、今日も民族文化の復興の文脈で用いられている。
なおモンゴル・シベリアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。