エセゲ・マラン
エセゲ・マラン · Esege Malan
ブリヤートの天空神で、すべての生けるものの創造者。西の五十五の善き天の長であり、東の四十四の悪しき天と戦う。その二分は、白いシャーマンと黒いシャーマンという実践の二系統に対応する。名は「父」を意味する。
解説
概要
エセゲ・マランは、ロシアのバイカル湖周辺に住むブリヤートの人々の信仰で、すべての生き物を造った偉大な創造者とされる天空の神である。名は「父」を意味する語を含む。ブリヤートの宇宙観では天が西と東に分かれ、エセゲ・マランは人を助ける西の五十五柱の天の長として位置づけられる。子の明けの明星ソロブン・ユビンは、供物を捧げれば豊かな実りと繁栄をもたらすとされた。
なお本サイトの分類では、モンゴル・シベリアの体系に含めて扱う。
ブリヤートの人々
ブリヤートの人々は、バイカル湖の周辺に住むモンゴル系の民族で、今日はロシア連邦のブリヤート共和国をなしている。モンゴル本土に比べて、土地に古くから伝わるシャーマニズムがよく保たれてきた。
西の五十五と東の四十四
ブリヤートの宇宙観では、天は二つの陣営に分かれている。西には人を助ける善き天、五十五柱の「白い天」(サガーン・テンゲリ)がおり、東には病や災いをもたらす四十四柱の「黒い天」(ハラ・テンゲリ)がいる。エセゲ・マランは、西の善き天の頂点に立つ。二つの陣営は争い合っており、その結果が地上の出来事となって現れると考えられた。
白いシャーマンと黒いシャーマン
ブリヤートのシャーマンは、西の天に仕え癒しや祝福を行う「白いシャーマン」(サガーニ・ボー)と、東の天に仕え呪いや冥界との交渉を担う「黒いシャーマン」(ハリン・ボー)の二つの系統に分かれる。ただし「黒」は悪を意味するのではない。死や病を扱う者もまた、共同体にとって欠かせない存在だったのである。
名
「エセゲ」はブリヤート語で「父」を意味する。「マラン」は「禿げた」あるいは「平らな」を意味するとする説がある。神の名が、そのまま「父」と呼びかけるものになっている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。ブリヤートでは、霊の宿る布や木の人形をオンゴンと呼ぶが、天空の神そのものが形に表されることはない。
関わる神格・伝承
西の五十五の天の長であり、テングリを頂点とする体系に属する。
文化的足跡
ブリヤートのシャーマニズムは1990年代以降に公に復興し、ブリヤート共和国ではシャーマンの組織が宗教団体として登録されている。
なおモンゴル・シベリアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。