カーマークヤー
カーマーキヤー · ニーラーチャルの女神 · ヨーニ・ピータ
アッサムのニーラーチャル丘に祀られる女神。サティーの女陰が落ちた地とされ、像をもたず岩の裂け目と泉が礼拝される。
解説
概要
カーマークヤー(Kāmākhyā / कामाख्या)は、アッサム州グワハティのニーラーチャル丘に祀られる女神である。名は「欲望の女神」と解される。シャクティ・ピータ(女神の聖地群)のなかでも最も重んじられる一つで、サティーの遺体が落ちた際に女陰(ヨーニ)が落ちた地とされる。像をもたず、洞窟の岩の裂け目と、そこから湧く泉が礼拝の対象となる。年に一度、女神が月経を迎えるとされる祭アンブバーチー・メーラーで知られる。
神話・物語
『カーリカー・プラーナ』と『ヨーギニー・タントラ』が主要な典拠である。夫シヴァがサティーの亡骸を抱いて三界をさまよったとき、ヴィシュヌがその遺体を円盤で断ち、各地に落ちた身体の部位がそれぞれ聖地となった。この地に落ちたのが女陰であるとされる。
『カーリカー・プラーナ』は、ナラカースラがこの女神を娶ろうとした説話を伝える。女神は、一夜のうちに丘の上まで石段を築き、寺と池を造れば妻となろうと答えた。魔王がほとんど成し遂げようとしたとき、女神は鶏を鳴かせて夜明けを装い、約束を反故にしたという。丘に残る未完の石段は、このときのものと語られる。
またこの地は、タントラの実践、とりわけヨーギニー信仰の中心として発達した。北東インドの在来の女神信仰が、シャークタ派の体系へ組み込まれていった過程を示す聖地として論じられてきた。
図像と象徴
人体形の像をもたない点が最大の特徴である。洞窟の奥にある岩の裂け目が女陰の形とされ、その下から湧く泉が絶えず岩を濡らす。赤い布と花で覆われ、参拝者はこれに触れて礼拝する。
象徴となるのは、この泉である。年に一度、雨季の初めにあたる六月、泉の水が赤みを帯びるとされ、女神が月経を迎えたものとして寺は三日間閉ざされる。四日目に開かれ、赤く染まった布が信者に分け与えられる。これがアンブバーチー・メーラーであり、数十万の参拝者を集める。
系譜と関係
サティーの女陰が落ちた地の女神として、パールヴァティーやドゥルガーの一相と理解される。守護のバイラヴァはウマーナンダとされる。境内には十柱のマハーヴィディヤーそれぞれの祠が置かれ、シャークタ派の体系がこの一つの聖地に集約されている。
文化的足跡
生殖の力と月経を、隠すべきものとしてではなく祭の中心に据える点で、この聖地はインドの宗教のなかでも際立った位置を占める。近現代の研究では、月経を不浄とする一般的な規範と、それを聖なるものとするこの信仰との緊張が、しばしば論じられてきた。
寺院は16世紀にコーチ王ナラナーラーヤナによって再建され、現在の建物はこのときのものを基礎とする。それ以前の歴史については、碑文と考古の資料が限られており、明らかでない部分が多い。