エルンワス
エルンワス · Ernmas
トゥアハ・デ・ダナーンの母神でヌアザの娘。アイルランドの名祖となる三女神エリウ・バンバ・フォドラと、戦の三女神バズヴ・マッハ・モリガンの母である。一人の母が国土と戦争を産む。自身の物語はほとんど伝わらず、系譜の結節点として機能する。
解説
概要
エルンワスは、アイルランドの伝承に現れる母なる女神で、神々の一族トゥアハ・デ・ダナーンの一人である。『アイルランド来寇の書』や『マグ・トゥレドの戦い』に名が見える。アイルランドの国土の名となった三女神エリウ、バンバ、フォドラと、戦の三女神バズヴ、マッハ、モリガンの母とされ、一人の母が国土と戦とを産んだことになる。
なお本サイトの分類では、ケルト神話の体系に含めて扱う。
国土と戦の母
エルンワスはヌアザ・アルゲトラームとエタルラムの娘とされる。その娘たちには、アイルランドの古い名となった三女神エリウ、バンバ、フォドラと、戦の三女神バズヴ、マッハ、モリガンがいる。エリウは、今日のアイルランドを指す「エール」の名の由来である。後の三柱については、魔術師カリティンとのあいだの子とする資料もある。国土を守ることと戦うこととが、同じ一人の母から生まれているのである。
三という数
三柱の女神が二組、つまり三という数が二度繰り返されている。三はケルトの図像や神話に繰り返し現れる数である。これらの三柱を、一柱の女神の三つの姿とみるか、三柱の別々の女神とみるかについては議論がある。なお、ロバート・グレイヴズらが広めた「乙女・母・老婆」の三つの姿を持つ女神という理解は20世紀に組み立てられたもので、本項はこの見方をとらない。
名と系譜
「エルンワス」の名は「鉄による死」「殺害」を意味するとする説があり、戦の女神たちの母にふさわしい名ともいえるが、語源には諸説があって定まっていない。エルンワス自身の物語はほとんど伝わらず、主要な女神たちを一つの家系に結びつける、系譜のつなぎ目としての役割を担っている。『アイルランド来寇の書』の系譜は、中世の修道士たちが複数の伝承をまとめ上げたものである。ウェールズのスィールも、同じく系譜のつなぎ目としてのみ名を残した神である。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
ヌアザの娘で、エリウ、バンバ、フォドラ、バズヴ、マッハ、モリガンの母である。
文化的足跡
日本語でこの名が挙げられることは少なく、アイルランドの女神たちの系譜を論じる文脈で言及される。
なおケルトの伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。