コンラ
コンラオホ · コンラー · Conlaoch
アイルランド神話の少年戦士。クー・フーリンとアイフェの子で、名を明かせぬ禁忌ゆえに父の手にかかって死んだ。
解説
概要
コンラ(Connla)は、アルスター物語群に登場する少年戦士である。クー・フーリンと女戦士アイフェの子で、スコットランドで母の手ひとつで育てられた。
『アイフェのひとり子の死』に語られる。『クアルンゲの牛捕り』の前史にあたる短い一篇だが、物語群のなかで最も知られた悲劇の一つである。
神話・物語
アイルランドへ帰るにあたって、クー・フーリンは身重のアイフェに黄金の親指の指輪を託した。子がこれをはめられる年になったら、アイルランドへ寄越せという。そのうえで三つのゲッシュを課した——ひとたび旅立ったら引き返してはならない。挑まれた戦いを断ってはならない。そして誰にも名を明かしてはならない。
コンラはトラハト・エシに上陸し、浜で武芸の技を演じた。それを見たアルスターの人々は、これほどの少年を生む土地には自分たちを塵に砕く戦士がいるにちがいないとコンホヴァル・マク・ネサに告げる。まずコンデレが遣わされ、名と血筋を問うたが、少年は答えなかった。歓迎の言葉に対しても、アルスターは一人で戦うか総がかりで来るかと返し、あなたは戦う相手として不足だと言い放つ。
次にコナル・ケルナハが出た。私が生きているかぎりアルスターに恥はかかせぬ、と言って向かう。コンラが投石具の弾を空へ放つと、その音の衝撃でコナルは倒れ、たちまち武器を奪われた。恥じて戻るほかなかった。
そこでクー・フーリンが立つ。妻エウェルが制した——あの子はあなたの子、アイフェの産んだただ一人の子です。彼は聞き入れなかった。手柄は女の助けで立てるものではない、アルスターのためなら相手が誰であろうと討つ、と。名を明かさねば死ぬぞと警告したが、少年は明かさない。二人は水中で組み合い、コンラが優勢に立ったとき、クー・フーリンはゲイ・ボルグを用いた。スカアハが彼にだけ教えた技である。
岸へ運ばれた少年は、アルスターの英雄たちに一人ずつ挨拶し、父に別れを告げて死んだ。墓標が立てられ、三日のあいだアルスターの牛の仔は一頭も生き残らなかったと物語は結ぶ。
図像と象徴
古代・近代を通じて定型の図像はなく、当サイトも主画像を掲げない。
この少年に結びつく標識は、黄金の指輪と、口にされなかった名である。指輪は身元を証すはずのものでありながら、父がそれに気づいたのは死後であった。三つの禁忌のうち、名を明かすなという一条だけが致命的に働く。誰の子かを言えないことが、そのまま死因になっている。
系譜と関係
父はクー・フーリン、母はアイフェ。継母にあたるエウェルだけが真実を知り、そして容れられなかった。
『アイフェのひとり子の死』には二つの稿本がある。古い方は9〜10世紀の古アイルランド語で書かれ、『黄書レカン』に伝わる。もう一つはトリニティ・カレッジの写本にあり、責任と賠償をめぐる法学的な注釈が添えられている。悲劇に法の議論が付されている点は、中世アイルランドがこの物語をどう読んだかを示している。
文化的足跡
父が我が子と知らずに討つという型は、諸言語の英雄叙事詩に広く見られる。ペルシアの『シャー・ナーメ』のロスタムとソフラーブ、ドイツの『ヒルデブラントの歌』がしばしば並べて論じられる。ギリシアではむしろ逆向きで、キルケーの子テレゴノスが父オデュッセウスとは知らずに討つ。
W・B・イェイツの戯曲『バーリャの浜辺で』(1904年)は、この物語をアビー座の開場演目として書いたものである。原典が短く、心理を語らないぶん、近代の作家たちはそこに動機と苦悩を書き込んできた。