クカ
クカ · コカ · Cuca
ブラジルの民間伝承の老いた魔女で、ワニのような姿をとる。夜に眠らない子供を攫うとされ、その子守歌はブラジル全土で歌われる。名はポルトガルの怪物コカに由来し、今日の図像はモンテイロ・ロバトの児童文学の造形による。
解説
概要
クカは、ブラジルの民間伝承で、夜に眠らない子供を攫うと言われる魔女のような怪物である。今日では鰐の頭を持つ老いた魔女の姿で知られるが、この姿は20世紀の児童文学によって定まったものである。名と原型はポルトガルから伝わった。
なお本サイトの分類では、南米先住民の体系に含めて扱う。
子守歌の怪物
クカは、夜になっても眠らない子を攫いに来るとされる。「眠れ、坊や、クカが捕まえに来るよ」という子守歌はブラジル全土で歌われ、子を寝かしつけるための存在としてクカは生きてきた。子供を脅してしつける怪物は各地に見られ、日本のなまはげ、ドイツのクネヒト・ループレヒト、イヌイトのカルプルイトと同じ役割を担っている。
ポルトガルのコカから
名は、ポルトガルとガリシアの「コカ」に由来する。コカは竜の姿の怪物で、ポルトガル北部のモンサンでは今も聖体祭の日に、聖ジョルジェ(聖ゲオルギウス)に退治される見世物が演じられる。植民地期にブラジルへ持ち込まれ、在来の怪異の伝承と混じり合った。鰐の顔という特徴は、アマゾンのカイマンを見知った土地ならではのものとみられる。外来の名と在来の要素が重なった点で、ルイソンやイアラと同じ成り立ちをしている。
作家が決めた顔
今日のクカの姿を決定づけたのは、モンテイロ・ロバトの児童文学の連作『黄色いキツツキ農園』である。ロバトは『サシ』(1921年)などでクカを、人を食う怪物の一種として描き、鰐の顔と鷹のような鉤爪を持ち、三千歳を超える魔女の姿を与えた。1970年代以降のテレビドラマ化によってこの姿が広く定着したが、民間伝承のクカの姿はもともと一定していない。近代の作家が怪物の顔を決めた例として、ピアサやキョンシーと同じ構図にある。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。今日流通する図像は、ロバトの作品とその映像化に由来するものである。
関わる伝承
文化的足跡
クカはブラジルで最もよく知られた民俗の存在の一つである。2021年のNetflixのドラマ『シダージ・インヴィジヴェル』では、鰐ではなく蝶に姿を変える女としてクカが描かれ、ロバトの造形から離れた現代の像も生まれている。
なお南米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。