サシ
サシ · サシ・ペレレ · Saci
ブラジルの民間伝承の一本足の黒い少年。パイプを吸い、赤い魔法の帽子で望むところへ現れる。塵旋風はサシが通った跡とされ、そこに数珠を投げれば捕らえられる。その表象に含まれる人種的ステレオタイプが今日議論されている。
解説
概要
サシ(サシ・ペレレ)は、ブラジルの民間伝承に登場する一本足のいたずら者である。黒い肌の少年の姿でパイプをくわえ、赤い帽子をかぶり、旋風とともに現れては消える。人を殺すような恐ろしさはなく、家や畑で小さな厄介ごとを引き起こす存在として親しまれてきた。トゥピとグアラニーの伝承を源の一つとしている。
なお本サイトの分類では、南米先住民の体系に含めて扱う。
一本足と赤い帽子
サシは一本の足で跳ねて移動するが、その動きはきわめて速く、あとには片足だけの足跡が残る。力の源は赤い帽子(カラプサ)で、この帽子があるからこそ、望む場所へ姿を消したり現れたりできる。帽子を奪えばサシは願いを聞き入れ、瓶に封じてしまえばサシそのものを捕らえられる。ただしその帽子は強い臭いを放ち、どれほど洗っても落ちないという。
旋風のなかに
地面の塵が渦を巻いて立ち上る塵旋風(ヘドモイニョ)は、サシが通った跡とされた。渦のなかに数珠や黒い十字を投げ込めばサシを捕らえられるとも言われる。乾いた土地でしばしば見られる小さな旋風が、姿の見えないいたずら者の仕業として説明されてきたのである。
小さな厄介ごと
サシのいたずらは、馬のたてがみを結んで絡ませる、家畜を逃がす、鍋に塩を足して料理を台無しにする、卵を腐らせる、といったものである。探し物が見つからないのもサシのせいにされた。困らされはするが、大きな害を与えることはない。
描かれ方をめぐる議論
サシの起源については、アフリカに由来するとみる説、先住民に由来するとみる説、両者が融合したとみる説がある。中央アフリカのバントゥ系の伝承にも一本足の存在が知られる。一方、黒人の少年として描かれるサシの姿には、19世紀以降の人種的なステレオタイプが含まれているという指摘があり、その図像と描かれ方をめぐる議論は今日のブラジルでも続いている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サシ・ペレレを描いた図である。
関わる伝承
文化的足跡
10月31日は「サシの日」とされる。ハロウィンに対して在来の民俗を祝う日で、2004年にサンパウロ州の州法で定められ、いくつかの市も条例で定めている。全国の記念日とする法案は2003年に出されたが、成立しなかった。
なお南米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。