カルプルイト
カルプルイト · カルパリク · Qallupilluit
北極の海岸の氷塊近くに住み、水に近づきすぎた子供を攫うイヌイトの生き物。鱗のある緑の肌と長い髪を持ち、背の袋に子を入れる。春に薄くなる海氷の危険を子供に教える機能を持つ伝承である。
解説
概要
イヌイト神話において、カルプルイト(カルパリク)は、氷塊の近くの北極の海岸沿いに住む生き物である。
水に近づきすぎた子供を攫うと言われる。この神話は、危険な海氷の上で遊ばせないなど、危険な環境から子供を守る目的を果たすと考えられている。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
姿
伝承は地域によって異なる。
人に似る。 人のような姿だが、鱗のある緑の肌を持つ。
長い髪と爪。 髪は海藻のように長く、爪は鋭い。
アマウティ。 背にアマウティ(子を運ぶ袋のついた上衣)をつけている。攫った子をここに入れる。
匂い。 硫黄のような匂いがするという。
子供を攫う
春、海氷が割れはじめる頃に現れる。
割れ目から。 氷の割れ目から手を伸ばし、近づいた子供を引き込む。
戻らない。 攫われた子は二度と戻らない。
教育としての怪物。 海氷は春に薄くなり、割れる。子供が落ちれば助からない。
この伝承は、その危険を子供に教える。「近づくな」と言うより、怪物の話のほうが効く。
実用としての民話。 民話が環境の危険を伝えるという機能は、各地に見られる。日本の河童が川の危険を、なまはげが怠惰を戒めるのと同じ構造である。
現代における位置
児童書。 1992年、イヌイトの作家アリス・カラースクの絵本『カルパリク』が出版された。
イヌイトの伝承を、イヌイト自身が子供に伝える媒体として書き直したものである。
文化の継承。 定住化と学校教育の普及により、伝承の口承が難しくなった。書物と映像が、その代わりを担うようになっている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
イジラクと同じく、子供に危険を伝える存在。
文化的足跡
カルプルイトは、カナダの児童文学とアニメーションにしばしば取り上げられる。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語のうちには氏族や個人の所有物として扱われるものがあり、公開の場で語ることが適切でない場合がある。