ボチカ
ネムケタハ · ネムケテバ · サディグア
ムイスカの文明化の英雄。東から来た髭の老人として織物・農耕・暦・法を教え、洪水を杖で岩を打ちテケンダマの滝を作って収めた。16世紀の記録では風や偶像とされ、英雄像は17世紀に整えられた。
解説
概要
ボチカ(ネムケタハ、ネムケテバ、サディグアとも)は、スペイン人の侵入以前に現在のコロンビア中央アンデス高地のクンディボヤカ高原に住んだムイスカの宗教における、神話上の人物である。
なおムイスカはコロンビアのアンデス北部の文明であり、本サイトではアンデス神話としてインカの体系に含めて扱う。
神話・物語
ボチカに関する記録は乏しく、1563年のウバケの記録に名が現れる。証人たちはボチカを、メルチョル・ペレス・デ・アルテアガが破壊した建物として、また旅人を襲っていた「虎」(おそらくピューマかジャガー)の父として、また「偶像」として、さまざまに描写した。ボチカとは何者かと問われたウバケは「彼は風である」と答え、スペイン人が破壊した建物の場所にいたという。
1688年のルカス・フェルナンデス・デ・ピエドラヒタ『新グラナダ王国征服通史』では、ボチカは「地上に降りてムイスカの宗教を創始した文明化の英雄」になっている。
パスカに現れ、のちボヤカ州ガメサに至り、人々は歓待した。長い髭を持ち、杖をつき、東から来た老人として描かれ、人々に織物、農耕、暦、法を教えた。
雨の神チブチャクムが高原を洪水で満たしたとき、ボチカは杖で岩を打ち、テケンダマの滝を作って水を落とした。チブチャクムには罰として大地を担がせ、それゆえ地震が起こる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ボチカの記念碑を撮影した写真である。近代の作例である。
この人物を規定するのは、記録の変遷である。16世紀の証言では風、虎の父、偶像といった断片であり、17世紀の年代記で文明化の英雄に整えられた。文明の伝授者という像が、スペイン人の記録者によって形成された可能性が高い。
髭を持つ東から来た老人という描写は、ビラコチャやケツァルコアトルと共通する。アメリカ大陸の複数の文明に、髭のある文明伝授者の伝承があることは、スペイン人の関心を引いた。
関わる神格・伝承
チブチャクムと対立する。テケンダマの滝の由来譚を担う。
ムイスカの神々としては、創造神チミニガグア、太陽スエ、月チア、母神バチュエがある。
文化的足跡
テケンダマの滝はボゴタ近郊の名所であり、ボチカがこれを作ったという伝えが今日も語られる。
なおアンデスとアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。