イアラ
イアラ · ウイアラ · マイ・ダグア
ブラジルの川に住む緑の髪の美しい女で、名は「水の主」を意味する。歌声で男を引き寄せ水底へ連れ去る。兄たちに殺されかけて返り討ちにし、父に川へ投げ込まれて魚に救われたという物語は19世紀以降に広まった。
解説
概要
イアラ(ウイアラ、マイ・ダグアとも)は、ブラジルの民間伝承と南米先住民の伝統に語られる、川に住む水の女である。緑の髪と褐色の肌を持つ美しい女の姿で川辺に現れ、歌で男を引き寄せて水の底へ連れ去る。名はトゥピ語の「水」と「主」から成り、「水の主」を意味する。今日知られるその姿は、先住民の水の霊とヨーロッパの人魚の伝承が重なり、19世紀の文学を経て形づくられたものである。
神話・物語
イアラはアマゾンの川に住み、長い緑の髪を梳きながら川辺で歌う。その声に引き寄せられた男は水底へ連れ去られ、二度と戻らないか、戻っても正気を失っているという。
19世紀以降に広まった物語では、イアラはもと優れた女戦士であった。その腕を妬んだ兄たちに殺されかけ、逆に兄たちを討ったため、父によって川に投げ込まれた。魚たちが彼女を救い、水の女に変えたという。
信仰
植民地期、ポルトガル人は人魚(セレイア)の伝承をブラジルに持ち込んだ。これが在来の水の存在の伝承と混じり合い、さらに19世紀には、先住民を題材にしたインディアニズモの詩人たち、なかでもゴンサルヴェス・ジアスらがこの人物像を整えた。したがって、今日のイアラは先住民の伝承をそのまま伝えるものではなく、ロマン主義文学を経て定まった姿である。
図像と象徴
長い緑の髪の女として描かれ、下半身を魚の尾とする人魚の姿をとることも多い。主画像は、ブラジル郵便が1974年に発行した記念切手《ブラジルの伝説》のイアラ(ニュートン・カヴァルカンティ画)である。
系譜と関係
アマゾンの水の存在の系列には、祭の夜に男に姿を変えるカワイルカボトもいる。
文化的足跡
イアラは、ブラジルの美術と文学に最も頻繁に描かれる民俗的な人物の一人である。
なお南米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。