テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — 殭屍
SINÆ · 中国神話・道教
殭屍

キョンシー

きょうし · ジャンシー · 僵尸

硬直したまま動き回る中国の死体妖怪。清代の筆記小説に多くの記録がある。額に符を貼り両手を前に伸ばして跳ねる姿は1985年の香港映画『霊幻道士』による造形で、古典の記述にはない。映画が伝承を覆い隠した例。

01

解説

概要

キョンシー(僵尸、殭屍)は、中国の死体妖怪の一種である。硬直した死体であるのに、長い年月を経ても腐乱することもなく動き回るもののことをいう。

広東語読みは「キョンシー」、普通話読みは「ジャンシー」。日本語における本来の音読みは「きょうし」であるが、現在広く定着している「キョンシー」という呼称は、広東語の発音に由来する音訳である。

概要

もともと中国においては、人が死んで埋葬する前に室内に安置しておくと、夜になって突然動きだし、人を驚かすことがあると昔から言われていた。それが僵尸である。

「僵」という漢字は死体が硬直するという意味で、動いても何かの拍子ですぐまた元のように体がこわばることから名付けられた。

清代の紀昀『閲微草堂筆記』、袁枚『子不語』に、多くの僵尸の話が収録されている。

趕屍

湖南省の湘西に伝わる「趕屍」(かんし。死体を歩かせる術)の習俗が、キョンシーの観念と結びつけられてきた。

異郷で死んだ者の遺体を故郷へ帰すため、道士が符を貼って死体を歩かせ、夜通し列を組んで運んだという。実際には二人が竹竿で遺体を担いで運んだものが、遠目に死体が跳ねているように見えたとする説明がある。

香港映画とキョンシー

1980年代の香港映画『霊幻道士』(1985年)とその一連の作品が、キョンシーの今日の形象を確立した。

額に符を貼られ、両手を前に伸ばし、跳ねて移動する——この姿は映画による造形であり、古典の記述にはない。息を止めれば見つからない、糯米が効くといった設定も同様である。

映画によって作られた妖怪像が、原典の伝承を覆い隠すという現象が、ここに典型的に現れている。日本では1980年代後半に大流行し、「キョンシー」の名が定着した。

図像と象徴

固有の古い図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。近代以前の絵画にキョンシーの図はほとんどない。

関わる伝承

中国の鬼(幽霊)とは異なり、魂ではなく身体が動く点で区別される。西洋のゾンビ、ドラウグルと同じく、動く死体の系列に属する。

文化的足跡

『霊幻道士』の流行以後、キョンシーは東アジアのポピュラー文化における定番の妖怪となった。ただしその姿の大半が1980年代の創作であることは、しばしば忘れられている。

なお中国の民間信仰と道教は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q1198159 — 骨格データの出典