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PLATE — ΚΆΜΠΗ
HELLAS · ギリシア神話
ΚΆΜΠΗ

カムペー

カンペー · カンペ · Kampe

タルタロスでヘカトンケイルとキュクロープスを見張っていた女の怪物。ゼウスがこれを殺して囚人たちを解き放ち、ティーターノマキアーに勝った。

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解説

概要

カムペー(Κάμπη / Campe)は、タルタロスの獄卒を務めた女の怪物である。ウーラノスが投げ込んだヘカトンケイルキュクロープスを見張っていた。ゼウスはこの怪物を殺して囚人たちを解き放ち、その助力を得てティーターノマキアーに勝つ。

物語のうえでの出番はこの一場面だけだが、そこで世界の支配権が動く。神々の交代を可能にした鍵が、名も知られぬ獄卒の死だったことになる。

登場する物語

名の解釈は複数ある。ギリシア語のカンペー(κάμπη)は普通名詞として「毛虫」「蚕」を意味する。アクセントの位置が異なる同音の語(καμπή)は本来「川の蛇行」を指し、そこから広く「曲がり」「湾曲」一般を意味するようになった。怪物の名はこの後者に関わるとみられ、身をくねらせる姿を指した可能性がある。

キュクロープスとヘカトンケイルの幽閉と解放は、すでにヘーシオドス『神統記』に語られている。ただしヘーシオドスはカムペーにも、そもそも番人の存在にも触れていない。この獄卒が現れるのは、失われた叙事詩『ティーターノマキアー』を経由したとみられるアポロドーロス『ビブリオテーケー』である。そこではこう語られる——ゼウスはクロノスとティーターンに戦いを挑んだ。十年のあいだ戦ったのち、大地はタルタロスへ落とされた者たちを味方にすればゼウスが勝つと予言した。そこでゼウスは彼らの獄卒カムペーを殺し、その縛めを解いた。

この怪物が後から物語に加わったことは重要である。解放という出来事だけがあった古い層に、後の語り手が「番人がいたはずだ」という要請から一体の怪物を書き加えた、と読むことができる。神話が語り直されるなかで登場人物が増えていく過程の、分かりやすい例といえる。

シケリアのディオドーロスは、これとは別の話を伝える。ディオニューソスがリビュアのザビルナ市のかたわらに陣を張ったとき、多くの住民を殺していた「大地から生まれたカムペーという怪物」に出遭い、これを討ったというのである。タルタロスの獄卒と同じ存在なのか、名を共有する別の怪物なのかは決めがたい。

図像と象徴

姿を詳しく描いたのは、5世紀の詩人ノンノス『ディオニューソス譚』である。上半身は女、胸から腿の分かれ目までは海獣の硬い鱗に覆われ、髪の代わりに毒を吐く蛇が房をなす。足からは千匹の這うものが毒を撒き、首のまわりには獅子・猪・犬など五十の獣の頭が咲く。手の爪は鎌のように曲がり、肩から喉の上へ蠍が尾を高く掲げて絡みつく。二枚の暗い翼を打ち鳴らして嵐を起こし、瞼からは炎が散る——ゼウスはこれを雷霆で撃ち殺した、という。

ジョゼフ・ファンテンローズは、ノンノスの描くカムペーがそのテューポーン像の女性版にあたると指摘した。ノンノス自身が「エキドナのごときエニューオー」と呼び、蛇の脚をエキドナに準え、スピンクスやスキュラに喩えていることから、これは名を変えたエキドナなのだという読みである。実際、ヘーシオドスによるテューポーンの描写(『神統記』820行以下)とノンノスのカムペー描写はよく似ている。

裏を返せば、この詳細な姿は5世紀の詩人の造形であって、古典期の伝えではない。アポロドーロスもディオドーロスもカムペーの姿を一切描いていない。名前だけがあり、姿は千年近く後に与えられたことになる。

古代の作例は知られていない。図像を持たない怪物であり、本項では主画像を置いていない。

関係する神格・退治した英雄

討ったのはゼウス(ディオドーロスの伝えではディオニューソス)。見張っていたのはヘカトンケイル三兄弟とキュクロープス三兄弟。解放された彼らは、ヘカトンケイルが無数の腕で巨石を投げ、キュクロープスがゼウスに雷霆を、ポセイドーンに三叉戟を、ハーデースに姿を隠す兜を鍛えて授けた。カムペーの死がこれらの武器を可能にしたことになる。

文化的足跡

ルネサンス期のイングランドでは、スペンサー『妖精の女王』とミルトン『失楽園』の怪物像にカムペーの影響を見る議論がある。古典を渉猟した詩人たちが、ノンノスの描いた複合的な怪物から着想を得たという読みである。名がほとんど知られない怪物としては、めずらしく後世に痕跡を残した例といえる。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q176130 — 骨格データの出典
Commons
Campe — 図像カテゴリ