玄武
げんぶ · 玄冥 · 亀蛇
中国神話の四神の一で、北方と冬・水をつかさどる守護獣。亀に蛇が絡む姿をとり、漢代の墓室や瓦当、日本の高松塚古墳・キトラ古墳の壁画にも描かれた。宋代に「真武」と改められ、道教の神、真武大帝(玄天上帝)へと展開した。
解説
概要
玄武(げんぶ、Xuánwǔ)は、中国神話の四神の一で、北方をつかさどる守護獣である。亀に蛇が巻きつく独特の姿をとり、五行では水、四季では冬、二十八宿のうち北方七宿に配される。「玄」は北方の色である黒を、「武」は鱗甲(りんこう)をまとう亀の武備を指すとされる。青龍・白虎・朱雀と並ぶ四神の一で、のちに道教の神、真武大帝へと展開した。
信仰
玄武の起源は、亀卜(きぼく=亀甲を焼いて吉凶を占う古代の占い)に遡るとされる。亀は長寿と、冥界に通じて未来を告げる霊力の象徴であり、水に棲むことから水神とも、北の守り手ともみなされた。亀と蛇の交わる姿は、陰陽の和合を表すとも解された。宋代、皇室が始祖と仰いだ聖祖・趙玄朗の諱(いみな)を避けて「玄」の字が「真」に改められ、玄武は真武(しんぶ)と呼ばれるようになる。人格神としての真武大帝は玄天上帝の項で扱う。浄楽国の太子が武当山で四十二年の修行の末に昇天し、北方を鎮めた神と伝えられ、明の永楽帝はこれを篤く奉じて武当山に壮大な宮観を営んだ。
図像と象徴
玄武の図像は、亀と蛇が絡み合う姿を基本とする。漢代には、墓室の北壁や瓦当に、蛇をまとう亀が刻まれ、死者の北を守った。高句麗の江西大墓や、日本の高松塚古墳・キトラ古墳の石室の北壁にも、亀に蛇が絡む玄武が描かれている。時代が下ると、真武大帝として、髪を振り乱して剣を執り、足下に亀と蛇を従える神将の姿で描かれるようになる。本サイトが掲げるのは、玄武をかたどった瓦当である。
系譜と関係
玄武は青龍・白虎・朱雀とともに四神をなし、方位・季節・五行を分かち持つ。獣としての玄武と、それを足下に踏む神としての玄天上帝は、同じ北方の観念から分かれたものである。中央に黄龍を配して五方の神とする説もある。
文化的足跡
真武大帝への信仰は、武当山を中心に東アジアへ広がり、道観や祭礼として今日まで続く。玄武の名は、南京の玄武湖のように地名にも残る。
なお道教と中国の民間信仰は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。