ブヴァネーシュヴァリー
諸世界の女主 · マニドヴィーパの主
マハーヴィディヤーの第四で、諸世界の女主を意味する女神。顕現した宇宙そのものを身体とし、虚空と結びつけられている。
解説
概要
ブヴァネーシュヴァリー(Bhuvaneśvarī / भुवनेश्वरी)は、マハーヴィディヤー(十大明妃)の第四に数えられる女神である。名は「諸世界の女主」を意味する。顕現した宇宙そのものを自らの身体とする女神とされ、虚空(アーカーシャ)と結びつけられる。十柱のなかでは穏やかな相に属する。
神話・物語
固有の説話は乏しい。彼女を主題とする物語よりも、宇宙の構造そのものを女神として捉える教説が中心をなす。『デーヴィー・バーガヴァタ・プラーナ』は、彼女がマニドヴィーパ(宝珠の島)に住まい、そこから世界を統べると説く。
シャークタ派の宇宙論において、彼女は物質としての世界が展開する場そのものである。十四の世界(ブヴァナ)を身体の各部に配する観想が伝えられ、名の由来もここにある。マハーヴィディヤーの体系では、カーリーが時を、トリプラ・スンダリーが美を担うのに対し、彼女は空間を担うとされる。
図像と象徴
昇る太陽のような赤みを帯びた金色の肌をもち、三つの眼と微笑をたたえた顔で描かれる。四臂のうち二手に羂索と突き棒を執り、残る二手で恩寵の印(ヴァラダ)と無畏の印(アバヤ)を示す。冠に三日月を戴く。
象徴となるのは虚空であり、何かが在るための場所そのものを司るという位置づけを担う。羂索と突き棒はトリプラ・スンダリーと共通するが、彼女の場合は世界を統べる者の徴として解される。
系譜と関係
シヴァの配偶神とされ、パールヴァティーの一相として理解されることもある。マハーヴィディヤーの体系においては、穏やかな相の代表としてカマラーと並べられる。ドゥルガーやアディティと重ねて論じられることもあり、母としての側面と宇宙論的な側面の双方をもつ。
文化的足跡
オリッサ州の州都ブヴァネーシュワルは、彼女の名に由来するとされる。もっとも同地の名はシヴァの別名トリブヴァネーシュヴァラに由来するという説もあり、決着していない。
ケーララやカルナータカには彼女を主神とする寺院があり、シュリーヴィディヤーの流派においてもトリプラ・スンダリーに次ぐ位置を与えられてきた。宇宙そのものを女神の身体とみる発想は、シャークタ派の思想を特徴づけるものとして、しばしば取り上げられる。