バイラヴィー
カーラ・バイラヴィー · トリプラ・バイラヴィー · バイラヴァの配偶神
マハーヴィディヤーの第五で、バイラヴァの配偶神。苦行の熱と世界を焼き尽くす破壊の力に結びつけられる恐るべき相である。
解説
概要
バイラヴィー(Bhairavī / भैरवी)は、マハーヴィディヤー(十大明妃)の第五に数えられる女神である。バイラヴァの配偶神であり、名もその女性形にあたる。恐るべき相に属し、苦行の熱(タパス)と、世界を焼き尽くす破壊の力に結びつけられる。
神話・物語
固有の説話は乏しく、カーリーやドゥルガーの憤怒相と重ねて語られることが多い。『デーヴィー・マーハートミヤ』において、女神が怒りに燃えて敵を討つ場面が、この相の典拠として引かれる。
タントラの教説においては、実践者の内なる熱として理解される。修行によって高まる力が、そのまま自らを焼く危険をもつという両義性が、この女神に託されている。カーラ・バイラヴィー、トリプラ・バイラヴィー、サンパトプラダー・バイラヴィーなど、多くの別称と細分された相をもつ。
図像と象徴
赤い肌をもち、切り落とされた首を連ねた花環をかけ、血に染まった衣をまとうと説かれる。四臂に数珠と経典を執り、恩寵の印と無畏の印を示す形が広く行われる。恐るべき相でありながら、手のうち二つが与える印を結んでいる点に、この女神の両義性が現れている。
象徴となるのは熱である。苦行の熱と破壊の熱、すなわち自らを高めるものと焼き尽くすものが、同じ一つの力として捉えられている。
系譜と関係
バイラヴァの配偶神であり、カーリーとほとんど区別しがたい憤怒の女神とされる。バイラヴァの妃であるという点だけが実質的な弁別特徴となる。マハーヴィディヤーの体系では、恐るべき相の一角を担い、チンナマスターやドゥーマーヴァティーと並べられる。
文化的足跡
シャクティ・ピータ(女神の聖地群)の多くに、その守護者バイラヴァとともに彼女の名が伝えられる。カシミールのシヴァ派においては、絶対的実在をバイラヴァと呼び、その力をバイラヴィーと呼ぶ。『ヴィジュニャーナ・バイラヴァ・タントラ』は、バイラヴァと彼女の対話という形式で112の観想法を説いた書である。
また、シャークタ派の実践者のうち高位に達した女性を指す称号としても、この名が用いられてきた。神格の名が実践者の位を指す語へ転じた例である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。