ハルワタート
ハウルワタート · ホルダード · ホルダード
ゾロアスター教のアムシャ・スプンタの一柱で、女神とされる。名は「完全」を意味し、水と健康を司る。不死を司るアムルタートと常に対で語られ、二柱で食と飲を表した。
解説
概要
ハルワタート(アヴェスター語 hauruuatāt)は、アムシャ・スプンタの一柱で、名は「完全」「無傷であること」を意味する。サンスクリットのサルヴァターター(完全性)と語根を同じくする。中期ペルシア語および新ペルシア語ではホルダード。アヴェスター語では女性名詞であり、経典のなかでは女神である。中期ペルシア語で文法上の性が失われたのちは男性として扱われるようになった。
神話・物語
『ガーサー』の段階から、この霊は不死を司るアムルタートと密接に結びついている。『ヤスナ』34.11は、完全と不死のいずれもが糧のためにあると述べ、45.10や51.7では両者が忍耐と力に並べられる。二柱をそれぞれ水と植物の守護者とする明確な割り当ては、より後の文献で整えられた。
六柱のうち、独自のヤシュトを捧げられているのはこの霊だけである(ヤシュト第4)。そこでは義者の助けと喜びのために創られたと語られ、その名を唱えることで魔を退けられるとされる。季節と年の巡りを守る者ともされた。敵対者は魔神タルウィで、終末にはアムルタートとともに渇きと飢えの魔を滅ぼすと説かれる。
図像と象徴
この霊を表した図像は伝わらない。本サイトが主画像を掲げないのはこのためである。代わりに、この二柱は食卓のふるまいのうちに現れた。水と植物、すなわち飲み物と食べ物がハルワタートとアムルタートに帰されたため、食事は黙って取るべきものとされたのである。『アルダー・ウィーラーフの書』23.6–8は、噛みながら無用の口をきいて「ホルダードとアムルダードを食した」男が地獄で罰せられる場面を伝える。図像をもたない霊が、日々の作法として身体に刻まれていた。
系譜と関係
スプンタ・アールマティ、アムルタートとともに三女神をなす。ヤザタの階梯では、風と大気のワユ・ワータ、聖なる呪文マンスラ・スプンタ、そしてフラワシの群れがこの霊の助力者(ハムカール)とされる。暦では各月の第6日と年の第3月を司る。
文化的足跡
プルタルコス『イシスとオシリスについて』46は、この霊をギリシアの富の神プルートスに擬している。アムルタートと対にしたハルワタート・アムルタートの名はソグド語文献に現れ、さらにイスラームの伝承では、バビロンに遣わされた天使ハールートとマールートの名の由来と考えられている。パウル・ド・ラガルドが指摘した対応で、今日ではひろく受け入れられている。イラン暦の第3月ホルダードにその名が残る。