ヴィプラチッティ
ヴィプラチッティ王 · Viprachitti
カシュヤパとダヌの子であるダーナヴァの王。妻シンヒカーはラーフの母、子マヤースラはアスラの建築家、曾孫はインドラジットにあたる。
解説
概要
ヴィプラチッティ(Viprachitti)は、インド神話のダーナヴァの王である。
聖仙カシュヤパとアスラのダヌのあいだに生まれた。マヤースラの父でもある。妻はシンヒカー。
神話・物語
ダーナヴァは、カシュヤパとダヌの裔にあたるアスラの一族である。ディティの裔であるダイティヤと並ぶ、アスラの二大系統の一つをなす。
ヴィプラチッティは、その王として神々と繰り返し争った。乳海攪拌ののちの神々とアスラの戦いにおいても、アスラ側の主要な将として現れる。
妻シンヒカーは、ラーフの母とされる女性である。ラーフは不死の霊薬アムリタを盗み飲んだためにヴィシュヌに首を刎ねられ、以後、日食と月食を引き起こす存在となった。
子マヤースラは、アスラの建築家として知られる。その娘マンドーダリーが羅刹王ラーヴァナと結婚したため、インドラジット(メーガナーダ)はヴィプラチッティの曾孫にあたる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この人物が担うのは、系譜の結節点という機能である。ダーナヴァの王として、ラーフの義父であり、マヤースラの父であり、ラーヴァナの一族と血縁で結ばれる。『ラーマーヤナ』の敵役と、日食月食の由来と、アスラの建築技術が、この一人を通じて連結される。
アスラの系譜がカシュヤパを共通の父とすることも見逃せない。神々もアスラも同じ聖仙の子であり、違いは母がアディティかディティかダヌかにある。善と悪の対立が、姉妹の子どうしの争いとして設定されている。
関わる神格・伝承
父はカシュヤパ、母はダヌ。妻はシンヒカー、子はマヤースラ。孫娘はマンドーダリー、曾孫はインドラジット。
同じアスラの一族として、ディティの裔であるダイティヤがある。ヒラニヤカシプやヒラニヤークシャはそちらに属する。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。ダーナヴァという語自体、ダイティヤに比べて紹介の機会が乏しい。
しかしアスラが単一の集団ではなく複数の系統に分かれていること、そしてそれが母系によって区別されることは、インド神話の系譜観を理解する要である。