エウリュロコス
エウリュロコス · Eurylochus · Eurylochos
オデュッセウスの部下で妹クティメネーの夫。キルケーの館では一人だけ外に留まって仲間の豚化を見届け、のちにヘーリオスの牛を屠るよう唆して船団の全滅を招いた。
解説
概要
エウリュロコス(Εὐρύλοχος / Eurylochos)は、『オデュッセイア』でオデュッセウスの部下を率いる者の一人である。主人の姻戚にあたり、キルケーの島では仲間の変身を逃れて報せを持ち帰ったが、トリーナキエー島では禁じられた太陽神の牛を屠るよう仲間をそそのかし、全員が滅びる原因をつくった。
神話・物語
アイアイエー島に着いた一行は、二組に分かれて島を探った。エウリュロコスの率いる組は森の中の館に行き当たり、中から歌声が聞こえた。仲間たちは招かれるまま館に入ったが、エウリュロコスだけは罠を疑って外に残った。キルケーは客人に薬を混ぜた酒を飲ませ、杖で打って豚に変えた。エウリュロコスは船に逃げ帰って急を告げたが、救いに行こうとするオデュッセウスに同行せず、すぐに島を去るよう説いた。
のちに仲間を人の姿に戻したオデュッセウスが残りの者を館へ呼び寄せようとすると、エウリュロコスはそれに反対し、オデュッセウスは怒って彼を斬ろうとしたが、仲間になだめられた(第10巻)。
冥府の入口で死者の霊を呼び出す儀式では、ペリメーデースとともに犠牲の獣を押さえる役を務めた(第11巻)。
トリーナキエー島が近づくと、オデュッセウスは予言に従って島を避けようとしたが、エウリュロコスは、疲れ切った仲間に夜の航海を強いるのは鉄のように非情だと主人をなじり、上陸を求めた。仲間がこれに賛同したため、オデュッセウスは太陽神の牛に手を出さないと誓わせて上陸を許した。だが逆風で足止めされて食糧が尽きた。オデュッセウスが祈りに出ているあいだに、エウリュロコスは、飢えて死ぬより神の怒りを受けて海で死ぬほうがましだと仲間を説き、ヘーリオスの牛を屠らせた。島を出た船はゼウスの雷霆に打たれて砕け、オデュッセウスひとりが生き残った(第12巻)。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
キルケーの館を描く壺絵では、獣の頭に変えられた仲間たちが主題となり、名を記されたエウリュロコスの確かな作例は知られていない。
系譜と関係
オデュッセウスの姻戚(『オデュッセイア』10巻)。古注は、オデュッセウスの妹クティメネーの夫とする。
文化的足跡
主人の警告に背いて自滅を招く部下という役回りは、『オデュッセイア』の帰郷の物語を、主人公だけが生き残る筋へと導いている。叙事詩の冒頭(第1巻7〜9行)は、仲間たちが自らの愚かさゆえにヘーリオスの牛を食べて帰郷の日を失ったと述べており、その愚かさを口に出して仲間を動かしたのがエウリュロコスである。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。