ナルキッソス
ナルシス · ナルキッソス · Narcissus
ギリシア神話の美少年。オウィディウスでは、エーコーら言い寄る者を退けたためネメシスに罰せられ、泉に映る自分の姿に恋してやつれ死に、水仙に変わった。コノーンやパウサニアースは別の版を伝える。「ナルシシズム」の語源。
解説
概要
ナルキッソス(Νάρκισσος)は、ギリシア神話に登場する美少年である。オウィディウスによれば、河神ケーピーソスとニュンペーのレイリオペーの子で、水面に映る自分の姿に恋して死に、水仙の花に変わった。「ナルシシズム」の語源となった。
神話・物語
最もよく知られるのは、オウィディウス『変身物語』第3巻の筋である。盲目の予言者テイレシアースは、この子は「己を知らなければ」長生きすると予言した。
ニュンペーのエーコーは、ヘーラー(ユーノー)に罰せられて、聞いた言葉の終わりを繰り返すことしかできなくなっていた。エーコーはナルキッソスに恋して抱きつこうとしたが、彼は身を振りほどいて拒んだ。エーコーは痩せ衰え、声だけが残った。
ナルキッソスに退けられた若者のひとりが天に祈ると、ネメシスがこれを聞き入れた。狩りに疲れたナルキッソスは泉に身をかがめ、水面に映る姿に恋をする。それが自分の姿だと気づいても離れられず、やがてやつれ果てた。亡骸のあった場所には、白い花弁の水仙が咲いていた。
コノーン『物語集』24の版では、アメイニアースという若者がナルキッソスに恋し、拒まれて剣を贈られた。アメイニアースはナルキッソスの家の戸口でその剣で自ら命を絶ち、ナルキッソスを罰するよう神々に祈った。のちナルキッソスは泉で自分の姿を見て恋し、そのそばで命を絶った。テスピアイの人々は、このためにエロースを特に篤く祀るようになったという。
パウサニアースは、ナルキッソスには瓜二つの双子の妹があり、その死ののち、泉に映る自分の姿を妹と思って眺め続けたという版を伝える。前50年頃のニカイアのパルテニオスの版は、2004年にオクシュリンコス・パピルスのなかから見つかった短いもので、エーコーは登場しない。
図像と象徴
古代の作例はローマ帝政期のものが知られ、ポンペイには第4様式の壁画が50点近く残る。いずれも、泉のほとりで水面を見つめる青年の姿である。本サイトが掲げるのは、カラヴァッジョの作とされる《ナルキッソス》(1597〜99年頃)である。

系譜と関係
オウィディウスでは、父は河神ケーピーソス、母はレイリオペー。後代のノンノスは、セレーネーとエンデュミオーンの子とする。エーコーに恋され、ネメシスに罰せられた。
文化的足跡
「ナルシシズム」(自己愛)という語は、この名に由来する。フロイトが1914年の論文「ナルシシズム入門」で論じて以降、精神分析の術語として定着した。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。