ファウヌス
ファウヌス · イヌウス · ファトゥウス
森・野・家畜の古いローマの神で、ラテン人の伝説上の王。犠牲の毛皮の上で眠る者に夢で未来を告げる予言の神。ギリシアのパーンと同一視されて山羊脚の姿となった。ピークスの子でラティーヌスの父。
解説
概要
ファウヌス(Faunus)は、古代ローマの宗教と神話において、森、平原、野の素朴な神である。家畜を繁殖させる相ではイヌウスと呼ばれた。文学においてギリシアの神パーンと同一視されるようになり、以後ローマ人はこれを角のある神として描いた。
ファウヌスは最も古いローマの神々——ディー・インディゲテース——の一つであった。叙事詩人ウェルギリウスによれば、ラテン人の伝説上の王であった。その霊はファトゥウスの名で予言の神として伺いを立てられ、ティブルの聖なる森、アルブネアの泉の周辺、そしてローマ市内のアウェンティーヌスの丘に神託所があった。
神託と祭
ウァッローは、神託の答えがサトゥルニウス韻律で与えられたと主張した。ファウヌスは、その聖域で犠牲の仔羊の毛皮の上に横たわって眠りに来た者に、夢と声によって未来を明かした。
ファウヌスの祭は12月5日のファウナーリアであり、農村で祝われた。2月のルペルカーリア祭もファウヌス——ルペルクスの名で——と結びつけられ、若者が山羊の皮をまとって走り、女たちを皮の紐で打って多産を祈った。
神話・物語
ウェルギリウス『アエネーイス』では、ファウヌスはピークスの子でラティーヌスの父であり、ラティウムの王統の一員である。夢の神託によってラティーヌスに、娘を異国の者に嫁がせよと告げた。
オウィディウス『祭暦』には、ファウヌスがヘルクレースとオムパレーの寝所に忍び込み、衣を取り替えていた二人のうち男装のオムパレーを女と思って触れ、ヘルクレースに突き飛ばされたという滑稽な話がある。以後ファウヌスは衣を嫌い、ルペルカーリアで裸で走らせるようになったという。
図像と象徴
固有の古代の図像は乏しく、本サイトも主画像を掲げない。パーンと同一視されてからは、山羊の脚と角を持つ姿で表される。
ラテン人の王であり、森の神であり、予言の神であるという三つの相が、この神を規定する。土着の神が、ギリシアのパーンの姿を借りることで、その古い性格を覆われた。
複数形のファウニー(ファウヌスたち)は、森の精霊の一群を指し、ギリシアのサテュロスと同一視された。
関わる神格・伝承
父はピークス、子はラティーヌス。妻または姉妹または娘はファウナ。パーンと同一視される。ルペルカーリアの神ルペルクスと同一。
文化的足跡
「ファウヌス」は西洋美術において、パーンと区別なく山羊脚の森の精として描かれ続けた。マラルメの詩とドビュッシーの前奏曲「牧神の午後」の牧神はファウヌスである。