サーンバ
サーンバ王子 · サーンバ・プラーナの名祖
クリシュナとジャーンバヴァティーの子。聖仙を欺いた罰として鉄の杵を産み、それが一族滅亡の武器となったと語られる。
解説
概要
サーンバ(Sāmba / साम्ब)は、クリシュナとジャーンバヴァティーの子である。聖仙たちを欺いた罰として鉄の杵を産み落とす呪いを受け、その杵の破片がヤーダヴァ族の同族争いの武器となった。また癩を病んでスーリヤの恩寵により癒されたとされ、インドにおける太陽信仰の伝承と結びつく。
神話・物語
『マハーバーラタ』第十六巻マウサラ・パルヴァと『バーガヴァタ・プラーナ』が伝える。ドヴァーラカーを訪れた聖仙ヴィシュヴァーミトラ、ヴァシシュタ、ナーラダらに対し、若者たちが悪戯を仕掛けた。彼を女の姿に装わせ、身重の女と偽って、生まれる子は男か女かと問うたのである。
見抜いた聖仙たちは怒り、この者はヤーダヴァ族を滅ぼす鉄の杵を産むであろうと呪った。翌日、彼は本当に鉄の杵を産み落とす。恐れた王ウグラセーナはこれを砕いて粉とし、海へ流させた。だが粉は岸に打ち上げられて葦となり、残った一片は魚に呑まれ、その魚を獲った猟師の矢尻となる。
三十六年ののち、プラバーサの地で酒宴に酔ったヤーダヴァたちが争いを始めた。手近にあった葦を掴むと、それは鉄の杵と化して互いを打ち殺した。一族はこうして滅び、バララーマは瞑想のうちに世を去り、クリシュナは休んでいるところをその矢尻で射られて生を終える。悪戯から始まった呪いが、一族の全滅へ至る。
もう一つの伝えは癩の治癒である。父の妃たちに不敬を働いた罰として、あるいは聖仙ドゥルヴァーサスの怒りを買った罰として、彼は癩を病んだ。ナーラダの勧めに従って太陽神スーリヤに苦行を捧げ、チャンドラバーガー河のほとりで癒されたと語られる。感謝して建てたのがミトラヴァナの太陽寺院であるとされる。
図像と象徴
固有の像容はほとんど伝わっていない。太陽信仰の文脈では、寺院の建立者として名が刻まれることがある。象徴となるのは鉄の杵であり、砕いて捨てたものが葦として戻り、避けようとした破滅がそのまま実現するという構図を担っている。
系譜と関係
父はクリシュナ、母はジャーンバヴァティー。母がシヴァへの苦行によって得た子とされる。同族争いにおいて、彼自身も命を落としたと語られる。
文化的足跡
『サーンバ・プラーナ』は彼の名を冠して伝わり、太陽神の礼拝を主題とする。オリッサのコナーラクの太陽寺院にも、彼の伝承が結びつけられてきた。イランからマガ・バラモン(サカドヴィーピーヤ)を招いて太陽祭祀を始めさせたとする記述は、西方の太陽信仰がインドへ入った経路を示す資料として、しばしば歴史研究で参照される。
呪いが避けようとした行為によって成就するという構図は、カンサの予言譚とも重なる。父の代の物語と子の代の物語が同じ型を反復し、一方は王朝の始まりを、他方は終わりをもたらすという対応が、この一族の物語を閉じている。