プラティヤンギラー
ナラシンヒー · アタルヴァナ・バドラカーリー · ニクンビラー
ナラシンハのシャクティとされる獅子面の女神。マートリカーの一柱で、邪法や呪詛を打ち消す修法の本尊とされる。ラーマーヤナにはニクンビラーの名で現れる。
解説
概要
プラティヤンギラー(サンスクリット प्रत्यङ्गिरा)は、ヒンドゥー教の女神である。ナラシンヒー、アタルヴァナ・バドラカーリー、ニクンビラーとも呼ばれる。
ナラシンハのシャクティ(女性原理)とされ、マートリカー——シャークタ派とタントラの伝統でとりわけ篤く祀られる七母神——の一柱に数えられる。
雄獅子の頭と女の身体を持つ姿で表される。
神話・物語
ヴェーダにおける最も早い姿は、アタルヴァ・ヴェーダの女神にして呪法の女神であるアタルヴァナ・バドラカーリーとしてのものである。
『デーヴィー・マーハートミヤ』によれば、シュンバとニシュンバの魔軍と戦うチャンディカーを助けるため、男性の神々はそれぞれの女性エネルギーを女神として顕現させた。ナラシンハのエネルギーが顕れたのがナラシンヒーであり、その姿は本尊によく似ていたという。
『トリプラ・ラハスヤ』は、この女神をトリプラスンダリーの憤怒の顕現とする。
叙事詩『ラーマーヤナ』にも名が現れる。ラーマとその軍がランカーで戦っているあいだ、インドラジットはニクンビラー——プラティヤンギラーの別名——を祀るニクンビラーの祭祀を始めた。完遂すれば不死身の力が得られるところであったが、ハヌマーンが現場に到着してこれを中断させる。そのためラクシュマナはランカーの戦いでインドラジットを討つことができた。
いくつものプラーナによれば、クリタ・ユガの終わり、宇宙から輝く火花が現れてヴィプラースラという魔族に変じた。ヴィプラースラは、アシュタ・ラクシュミー(ラクシュミーの八形態)を祀る八人の聖仙の儀礼を妨げる。怒った女神は自らの蓮を鎧(カヴァチャ)に変えて彼らを守り、そののちナラシンヒーの姿をとってヴィプラースラを討った。
図像と象徴
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伝えられる姿はこうである。黒い肌、獅子の顔、赤く血走った眼、乱れた髪、突き出した舌。獅子を乗物とし、髑髏の花輪を掛ける。
図像は主に二形態に分かれる。よく描かれる四臂の形では、獅子に坐して三叉戟、蛇の縄(パーシャ)、ダマル(鼓)、髑髏杯(カパーラ)を持つ。マハー・プラティヤンギラーと呼ばれる多面多臂の宇宙的な形態では、複数の獅子面と数多の手にさまざまな武器を握る。
ウグラ(激烈)な姿そのものが、信者を守る視覚的な形と考えられている。恐ろしい姿が守護の機能を果たすという発想は、南アジアの憤怒尊に共通する。
関わる神格・伝承
ナラシンハのシャクティであり、マートリカーの一柱。チャームンダー、バドラカーリーと近い位置にある。
ヒンドゥー教のみならず、仏教とジャイナ教の伝統においても祀られる。そのサーダナ(修法)は、邪法や呪術を打ち消し、福利を得、苦しみを滅ぼす目的で行われる。
文化的足跡
対抗呪術の女神という性格から、この女神への祈願は今日でも特定の文脈に限って行われる。呪詛を返し、災いを退けるための修法が、南インドの寺院で執り行われている。
日本語圏でこの女神が紹介されることはほとんどない。獅子面の女神という造形は、ナラシンハという男性形が広く知られるのに対し、その女性形がほとんど言及されないという不均衡を示している。