ニンカラック
ニンカラック · Ninkarrak
主に北メソポタミアとシリアで崇拝された医薬の女神で、シッパルとテルカに神殿があった。神の医師とされ、グラやニンイシナと並び、犬を象徴とする。アッカド帝国期から呪詛の文句に頻出し、ハンムラビ法典の呪詛文にも名が現れる。
解説
概要
ニンカラックは、主として北メソポタミアとシリアで崇拝された医薬の女神である。名はシュメール語ではなく、アッカド語か、今日のシリアの一部で話されていたとみられる未同定の基層言語に由来すると提案されている。表記が一定しないのは、古代の学者がシュメールの神名に近く見せようとしたためと推定されている。
信仰
最もよく確認される神殿は、シッパル(今日のイラク)とテルカ(今日のシリア)にあった。テルカの遺跡の出土品は、この地域の歴史の年代をより正確に定める手がかりともなった。ほかにアプム王国、アッシリア、ディヤラ地方などの北メソポタミア、ラルサやニップルなどの南メソポタミアの都市、ウガリトやエマルにも崇拝の記録がある。エブラの文書の「ニンカル」や、カルケミシュのルウィ語碑文の「ニカラワ」も、ニンカラックを指す可能性がある。
ほかの癒しの女神と同じく神の医師とされ、グラ、ニンイシナ、ニンティヌガ、バウと役割を分け合った。ほかの女神と同一視されることもあったが、この女神にしかない特徴もあり、メソポタミアの医薬の女神たちがそれぞれ別の起源を持つことを示している。アッカド帝国の時代から呪詛の文句に頻繁に現れ、そこではイシュハラと対にされることもあった。こうした病との結びつきから、のちに癒しの女神へ発展した可能性もある。ハンムラビ法典の末尾の呪詛文でも、法を改める者に治らぬ病を負わせる神として名が挙げられている。
名
標準的な表記 dnin-kar-ra-ak は前2千年紀以前には見られず、ウル第三王朝期の dnin-kar7、古バビロニア期の dnin-kar など、さまざまな表記がある。神名表『アン=アヌム』は、別名としてニンエキシガ(「死者への供物の家の女主人」の意か)を挙げる。語源は不明で、初期のアッシリア学者クヌート・タルクヴィストは「カラックの女主人」という地名由来の名と解した。
図像と象徴
犬はニンカラックとしばしば結びつけられ、ほかの医師の女神たちと同じく、その象徴と解されている。主画像は、「偉大な医師」として知られる女神グラの図で、癒しの女神群に共通する図像である。
系譜と関係
グラ、ニンイシナ、ニンティヌガ、バウと並ぶ癒しの女神で、イシュハラと対にされることもある。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。