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ネヘブカウ
PLATE — NḤB-KꜢW
AEGYPTVS · エジプト神話
NḤB-KꜢW

ネヘブカウ

ネヘブ・カウ · ネヘブウ・カウ · Nehebkau

『アニのパピルス』(前1250年頃)の図像に基づく描画/Eternal Space, CC BY-SA 4.0 CC BY-SA 4.0

エジプトの原初の蛇神。当初は魂を喰らう魔物とされ、アトゥムに鎮められて守護神へ転じた。マアトの法廷の四十二柱の一柱として死者を裁き、魂にカーを与える。

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解説

概要

ネヘブカウ(Nḥb-kꜣw)は、エジプト神話の原初の蛇神である。当初は魔物として恐れられ、のちに死者を守る葬送の神へと性格を変えた。

マアトの法廷を構成する四十二柱の陪審の一柱として死者を裁き、その魂にカー——生者と死者を分かつ魂の一部——を与えるとされた。名の解釈は定まらず、「カーを与えるもの」「霊を繋ぐ者」「分身をひっくり返す者」「魂を集める者」「食物と財を供する者」「威厳を授ける者」など、多くの訳が提示されてきた。

神話・物語

この神は、はじめから善い存在だったわけではない。

ピラミッド・テキスト』のネヘブカウは、来世で人間の魂を貪り食う、長く曲がりくねった邪悪な蛇である。太陽神の敵とされ、ラーがその蜷局から逃れるために、風で押される舟を造ったとまで語られる。

力の由来も凶暴である。七匹のコブラを呑み込んだのち、この神は魔術にも火にも水にも傷つけられなくなった。初期の神話では火を吐く能力も語られる。エジプト学者リチャード・ウィルキンソンは、この神の強大さを、魔物としての出自と蛇そのものの性質に帰している。

転機は『コフィン・テキスト』にある。原初の神アトゥムが、この蛇の背骨の一点に爪を当てる。それだけで、混沌として恐ろしい性質が鎮められた。以後ネヘブカウは、神にも人にも親しみうる、助けとなる神へと変わる。ラーの従者にして相棒となり、来世の王に食物と助力を供する。やがては天の王としてのラーの役までを引き受けるに至った。

出自は一定しない。セルケトレネヌテトゲブの子とされることもあれば、単に「大地から現れた」とも言われる。住まいはヘリオポリスの大神殿——ラーとアトゥムの祭祀の中心地——であったという。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、『アニのパピルス』(前1250年頃)に描かれた姿に基づく図である。人間の脚を持つ蛇として表される。

蛇に脚を与えるという造形が、この神の位置を示している。純粋な獣でも人でもない中間の形であり、魔物から神格への移行そのものが図になっているとも読める。冥界の門を自ら守っていたとする記述もあり、東洋学者ヴィルヘルム・マックス・ミュラーはこの点を強調した。

象徴の核心は名にある。カーを「繋ぐ」という語義は、死者の魂を身体に結びつける働きを指すと解される。エジプトにおいて死は魂の分解であり、再生とはその再結合である。ネヘブカウの名は、その結び目そのものを指している。

太陽神と近い位置にあることから、この神の名は守りの呪文に繰り返し唱えられた。護符にも、儀礼にも用いられる。かつて魂を食った蛇が、魂を守る文句として口にされている。

関わる神格・伝承

四十二柱の陪審の一柱として、マアトの法廷に列する。アトゥムに鎮められ、ラーに従う。系譜はセルケト、レネヌテト、ゲブのいずれかとされるが、確定しない。

祭も知られている。ネヘブカウの祭は中王国から新王国にかけて広く営まれた。神殿を持たないヘフのような神格とは異なり、この蛇神には暦の上の居場所があった。

文化的足跡

日本語圏では、エジプトの蛇といえばアペプ(アポフィス)とウアジェトが挙げられ、この神の名が出ることはまれである。

しかしネヘブカウの経歴は、エジプトの神格の可塑性を示す好例といえる。魂を喰らう魔物が、爪の一突きで守護者に変わり、やがて太陽神の役までを継ぐ。善悪が固定した属性ではなく、鎮められたかどうかで決まる——エジプトの宗教における秩序の考え方が、この一柱の履歴に凝縮されている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q2044276 — 骨格データの出典
Commons
Nehebkau — 図像カテゴリ